2011年5月20日

医療機関における暴力対策ハンドブック(中外医学社)が出版されました。

医療機関における暴力対策ハンドブック(中外医学社)が

出版されました。今回は病院におけるあらゆる暴力、パワハラ、いじめ

などもとりあげました。

アマゾンでもまもなく買えると思います。


http://www.chugaiigaku.jp/modules/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1156


医療機関における暴力対策ハンドブック

和田耕治,三木明子,吉川 徹(編著)

A5判 180

定価3,780(本体3,600+)

ISBN978-4-498-07646-4

あらゆる医療機関で日常的に起こりうる暴言・暴力・セクシャルハラスメント・パ

ワーハラスメント・ストーカー行為といった頭の痛い問題について,その対策と予

防,発生時の対処,スタッフの行うべき取り組みをわかりやすく解説します.本書で

は,従来問題にされてきた「患者→職員」への「暴力」に限らず,今まであまり言及

されてこなかった「患者→患者」「職員→職員」「職員→患者」への「暴力」につい

てもフォローしています.

執筆者一覧(執筆順)

和田耕治 北里大学医学部公衆衛生学教室講師

三木明子 筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻准教授

吉川 徹 労働科学研究所副所長

黒田梨絵 筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻博士後期課程

鈴木まち子 前川崎市立多摩病院副院長・看護部長

岡田康子 (株)クオレ・シー・キューブ代表取締役

谷山悌三 元神奈川県警察秦野警察署長

池田勝紀 船橋市立医療センター救命救急センター医長

山口敏彦 筑波メディカルセンター病院渉外管理課課長

尾貴美子 前仁厚会病院看護部長

日下修一 獨協医科大学看護学部准教授

宮治 真 愛知県医師会総合政策研究機構プロジェクト室長/名古屋市立大学大学院

医学研究科客員教授

天野 寛 愛知県医師会総合政策研究機構主任研究員

加藤 憲 愛知県医師会総合政策研究機構主任研究員

塩入明子 がん・感染症センター東京都立駒込病院神経科

赤穂理絵 がん・感染症センター東京都立駒込病院精神科医長

鈴木典浩 前橋赤十字病院総務課長

推薦の言葉

 医療機関は患者にとっても,医療従事者にとっても安全で,安心できる場所である

べきというのは言うまでもないことです.しかし,近年の医療を取り巻く環境の変化

により,一部の患者(さん)の中には医療従事者に対して不当なクレームや暴力など

の違法行為に至ることが課題となっています.また,つらい症状があったり,不安で

気持ちの余裕もなくなったりすることもあってか,病棟や外来においての患者同士の

トラブルもまれではなく,こうしたことにも医療機関は対策が求められるようになっ

ています.

 本書では,対策の骨子として,院長や理事長などの管理者が方針として,「医療機

関を患者にとっても,職員にとっても安全で安心できる場にするためにいかなる暴力

も容認しないということ,そして被害にあった場合には組織として守る」ということ

を示すことが強調されています.また,本書で紹介されている医療機関の取り組みの

事例には組織として取り組む暴力対策の良好事例が豊富です.

 残念ながら医療従事者にかかる業務の負担の増大や高度化もあってか,患者をケア

すべき医療従事者同士でもトラブルが発生しています.医療従事者の配慮が欠けて患

者(さん)に結果的に暴力となるような事例もあり,こうしたことが起こりうること

を想定して医療機関では対策を行う必要があります.最前線の取り組みからは,医療

機関での暴力対策を多面で新しい切り口を知ることができるでしょう.

 本書では様々な優れた取り組みが示されていますが,どの医療機関も試行錯誤をし

ながら,安全で安心な環境作りができたことがうかがえます.そのためにも医療従事

者のひとりひとりが暴力を許されないものと認識し,さらには暴力を容認しない文化

をめざして時間をかけながら創り上げて行くことが必要です.

 また,本書は医療機関だけでなく,今後さらに重要性が増す介護施設においても活

用できそうです.

本書をもとに,医療機関が自主的に暴力対策に取り組み,安全で,安心できる環境作

りを進めることでさらに医療の質を高めていただけると幸いです.

20114

日本医師会常任理事 今 村  聡

推薦の言葉

 「JRでも暴力急増,駅員受難」(朝日新聞1997618日)という記事で,「首都

圏のJR駅や車内で,駅員や乗務員が酒に酔った勤め帰りのサラリーマンに殴られるな

どして負傷する事件が大幅に増えている.」と報じた.日常性の中に「暴力」が入り

込んできたのはこの頃ではないかと思う.

 医療現場では何が何だかわからないうちに,自分自身に危害が及んでくることを認

識しておかなければならない.こうした訓練やプロトコルの確立が遅れている,めっ

たに起こらないからこそ見過ごされがちになるが,暴力は忘れた頃にやってくるので

あり,これからは「接遇」とともに「暴行から身を守る法」についても学習する必要

があろうと,当時,看護管理者であった私は書いている(井部,1997).

 本書は,そうした問題認識に応えてくれるものである.本書での主張は明確であ

る.つまり,医療機関でのあらゆる暴力は許されるべきことではない,ということで

ある.暴力行為は犯罪であり,暴力行為者が患者であろうとなかろうと,暴力を受け

たという事実に変わりはない.対象の年齢や疾患で暴力の定義は変わることはない.

患者の安全や健康を守ることと同じくらい職員自身の安全と健康を守ることは大切で

あると述べている.そして暴力を生み出す職場の土壌を変えようと指摘している.

 本書では,さまざまな暴力が「職員から職員」(1章),「患者(家族)から職

員」(2章),「患者から患者」(3章),「職員から患者」(4章)に発生すること

が論じられ,「医療機関での体制作り」(5章)が提案される.医療機関において暴

力を容認しない「文化」を醸成する組織改革のためにトップの覚悟と熱意が重要であ

ると説く.

20114

聖路加看護大学学長 井部 俊子


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