2011年4月17日

被災した建物に入る際に自分を守るために知っておきたい10のポイント

1.被災した建物は安全でないことを前提にします。

 被災した建物は、安全なように見えても、さらなる余震などで倒壊の恐れなどがあります。できるだけ専門家によって建物の安全が確認されてから入ります。また、臭い、異音がしたらすぐに安全な場所に退去します。子どもたちは安全が確認されてから入るようにします。



2.さらなる安全を確保するために準備をします。 

 予期せぬ火災に備えて消火器をそばに確保します。保護具(ヘルメット,保護めがね,保護手袋,安全靴,保護マスク)を適宜装着します。重量物を取り扱う作業(一人あたり20Kg以上)は一人で行いません。また、適切な休憩時間は確保するように計画的に行います。暖房器具・換気器具・エアコンディショナーなどは、使用する前に点検し、きれいにしてから使用します。



3.感電を予防します。

 感電の危険性がないことを確認するまではメインのブレーカーを切ります。特に、電気回路や電気製品が濡れている,水の中やそばにあれば直ちにメインのブレーカーを切ります。主電源を操作するために,水に入る必要がある際には,電気技師など専門の方に相談します。また、水の中に立って作業をしているときには,絶対に電気機器の電源を操作しないでください。



4.家をきれいにして、物が腐ったり壊れたりしないようにします。

 水を吸収したもの、乾燥できないもの、きれいに出来ないものは捨てます。

 水漏れがあれば修理します。湿気を除くために、ファン、除湿装置を使用し、ドア・窓を開けます。防腐処置として、約4リットルの水に1カップの漂白剤を混ぜた水や漂白剤混合物で洗い、堅いブラシで表面をこすり洗いし、きれいな水ですすいでから、乾かします。水を吸収しない素材で覆われたもので津波の水にさらされたものは、まず石鹸と水で洗い、20リットルに1カップの漂白剤を混ぜたもので消毒し、空気乾燥させましょう。漂白剤を用いる際は保護具を着用し、換気のために窓とドアを開けます。漂白剤とアンモニアは決して混ぜないで下さい。 発生したガスを吸い込むことにより死亡することがあります。



5.危険物があることを想定し、適切に対処します。

 危険物があった際にはまずはどのようなものであるか、また状態を確認します。自分で対応できないと考えた際には専門の業者や役場などに相談をします。もし自分で取り扱いが可能な際でも,適切な保護具を着用します。また危険物が手についたりした場合には直ちに洗浄し、必要に応じて医療機関を受診します。車のバッテリーを取り扱うときには,絶縁用の手袋を着用し,注意深く対応して下さい.バッテリーから漏えいしている酸などには触れないようにして下さい



6.一酸化炭素中毒は死に至ることもあるため、最大限の注意を払います。

 屋内や車庫などの換気の良くない場所では、発電機・圧力ワッシャー・木炭使用のグリル・キャンプストーブまたは他の燃料を燃やす装置を使用すると一酸化炭素中毒の恐れがあります。また、出入り口、窓、空気孔などの空気取り入れ口の近く(屋外であっても)にも、これらの装置を置かないようにします。一酸化炭素は無臭無色であり、死亡する危険があります。



7.発生したかびが健康を害することを知り適切に対応します。

 津波や台風,洪水の後は,湿度が上昇するため,カビが繁殖しやすい環境です.喘息やアレルギーや,呼吸器疾患を持っている方は,カビを吸い込むことにより持病が悪化する可能性があります。カビに曝露すると,鼻水,目のかゆみ,喘息,皮膚のかゆみ,などのアレルギー症状が生じます.また,慢性閉塞性肺疾患の方は,カビが肺に感染しやすい状態になっています.症状が出た場合には,すぐに専門家に相談をして下さい.

カビは,見た目と臭いで認知することができます.洗濯,消毒ができないもの(例:マットレス,カーペット,パッド,絨毯,布張りの家具,化粧品,動物のぬいぐるみ,幼児用・乳児用玩具,枕,スポンジゴムで覆われた物,本,壁紙,紙製品など)は,取り除くか破棄して下さい.

汚水や下水が浸み込んでいる化粧ボード,保温材は取り除くか破棄して下さい.表面が固く滑らかな器具(例:フローリング,木造や金属の家具,調理台,調理器具,洗面台,その他の衛生器具)は,熱湯や食器洗い用の洗剤で十分に洗浄して下さい.



8.作業の合間や終了時には手をこまめに洗います

 手になにが付着するかわかりませんのでこまめに手を洗うようにします。できるだけ石けんを用いて、清潔な水で洗い流します。また衣服にも泥などが付着するのでなるべく早く洗濯し、玄関などで脱ぐなどして生活の場に泥などを持ち込まないようにします。



9.けがを予防し、けがをした場合には直ちに清潔な水で洗います。

 被災した建物にはガラス片や釘など様々なものがあるためけがを予防することが第一です。しかし、もしけがをした場合には直ちに清潔な水で十分に傷を洗います。また必要に応じて医療機関を受診します。破傷風菌が傷から入り、発症すると死に至ることもあります。10年以内に破傷風のワクチンを接種していない人は予防的破傷風ワクチン接種も可能でしたら行うことも良いでしょう。ボランティアとしてこのような作業をされる方は接種してから現地に入りましょう。



10.安全運転を心がけます。

 交差点などでは一旦停止してよく見てから横断します。早めの点灯をし、徐行運転し、車間距離を十分にとってください。路上のごみ・残骸に注意します。シートベルトを締める、飲酒運転をしないなど普段通りにします。



担当:田中完(新日本製鐵(株)名古屋製鐵所産業医)、江口尚、和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学) 



参考:米国CDC.Clean up safely after a disaster


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