日本医師会勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会の取り組み
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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第29号◇◆ に掲載されました
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2012/4/29 ━━━
日本医師会の中に設置された「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会(委員長:保坂隆(聖路加国際病院)」は2009年度から活動を開始し、有期のプロジェクトとして2011年度まで4年間活動した。一定の成果を上げたこともあり、2011年度にいったんプロジェクトは終了した。今後の活動については具体的には決まっていないがこれまでの成果の一部を紹介する。
勤務医の長時間労働や疲労などの労働環境が課題として認識されるなかで、委員会では「勤務医の健康を守る」という視点から特に医療機関での職場環境に焦点を絞った。2009年に勤務医1万人の全国調査を行い、医師の12人に1人がなんらかのメンタルヘルスの支援が必要であるということが明らかとなった。また必要な改善策の優先順位も明らかになり、「医師が元気に働くための7か条(http://dl.med.or.jp/dl-med/kinmu/doctor7.pdf)」「勤務医の健康を守る病院7か条(http://dl.med.or.jp/dl-med/kinmu/hospital7.pdf)」を作成した。これらは日本医師会員全員に配布され、現在はHPより入手可能である(その他の資料も含めて入手可能http://www.med.or.jp/doctor/hospital_based/)。
2010年より、解決策の一つとして医師が主導する病院での職場環境改善や特にメンタル面で支援が必要な医師への対応を検討するための4時間のワークショップを全国で開催した。2011年度末までに全国で計14回開催された。ワークショップの様子は http://www.med.or.jp/doctor/hospital_based/doc_we/000851.html /(日本医師会会員でなくても閲覧可能)にて見ることができる。その他にも論文や書籍の執筆もされており、ぜひ最終の報告書もご覧をいただければと思う(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120328_6.pdf)。
以下は個人としての雑感である。
病院をより働きやすい場にするための取り組みはすでにいろいろと行われている。特に看護師さんの取り組みは具体的で学ぶことが多い。しかし、病院全体での取り組みとなると医師、特に院長や理事長などの関わりが不可欠である。残念ながらこれまで医師が主導するような取り組みを具体化に行っている病院は多くなかった。その背景には医局からの派遣のために数年間とりあえず我慢するしかないといったあきらめや、多忙な医師が診療をしながら職場をよくするという時間を確保できなかった、医師のコンセンサスを得ることが容易ではなかったなど様々な理由が考えられる。
近年は「働きやすい職場」に医師が集まる傾向があり、医師を確保できることこそが経営の安定につながるともいえる。ぜひ、院長や理事長が主導して、医師がともに考え、そして様々な職種を巻き込んで働きやすい病院にするための取り組みが一つでも多くの医療機関でなされればと考えている。これは、病院や医療従事者のためだけでなく、医療安全や医療の質の向上にもつながるのである。つまりこれらの取り組みは患者さんのためでもある。
2012年5月22日
2012年1月23日
医療機関での産業保健活動の実際
医療機関においては様々な危険有害要因があり、組織として医療従事者の健康と安全を守る取り組みが求められる。
医療機関での産業保健体制の構築のためには、まずは産業医を選任し、その時間を確保することから始める。また、様々な取り組みを行うにあたっては、院長や理事長が方針として「医療従事者の健康と安全を守ることが重要である」ことを明言することで対策がより効果的に行われることになる。
講演では、医療機関での患者からの暴言や暴力対策、新型インフルエンザなどの感染症から守るための呼吸用防護具の適正、日本医師会の勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会の活動について報告した。
患者からの暴言や暴力対策を進めるにあたっては、匿名の質問票調査などを院内で行い。現状を把握してから対策を行うことが進められる。しかしながら、近年職員間でのハラスメントなども課題となっており、同時に産業保健の観点からも対策を行うことが必要とする医療機関が少なくない。
呼吸用防護具についてはN95マスク(レスピレーター)が新型インフルエンザなどにおいて使用することがあるが、フィットテストを行い十分にフィットすることを確認していなければ期待される効果は得られない。N95マスク(レスピレーター)を使用するがフィットテストをしたことがないという方はぜひこちらのビデオをインターネットでご覧いただきたい。URL:http://www.youtube.com/user/fittest2009 Youtubeのサイトでフィットテストと検索するとアクセスが容易である。
医師の健康についても特にメンタルヘルスが課題になっており、日本医師会のサイトにある医師の健康支援のための環境改善チェックリストなどを用いると一次予防のための対策を行うことができる(www.med.or.jp/kinmuよりダウンロード可能)。
医療機関での産業保健活動を進めるにあたっては賛同が得られず進めるのが困難なことも多いが、小さな事例を積み重ねていくことが重要である。
参考文献
1.医療機関での暴力対策
・和田耕治,三木明子,吉川徹(編著).医療機関における暴力対策ハンドブック,中外医学社, 2011
・相澤好治(監修),和田耕治(編著).病医院の暴言・暴力対策ハンドブック.メジカルビュー.2008
2.呼吸用防護具の適正使用
・和田耕治,吉川徹. 呼吸用防護具フィットテスト・トレーニングマニュアル,労働科学研究所出版部,2010.
3.東日本大震災の被災地における産業保健活動
・和田耕治,岩室紳也(編著)保健・医療従事者が被災者と自分を守るためのポイント集.中外医学社,2011
4. 医療機関での産業保健活動
・相澤好治(監修),和田耕治(編著):医療機関での産業保健の手引き、
篠原出版新社,東京,2006.
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