2011年5月30日
医療機関の暴力対策MLのご参加
開設しております。
参加ご希望の方は
ご所属
お名前
登録アドレス
と
タイトルに 暴力対策ML参加希望として
ohhcw05@yahoo.co.jp
にメールください。なお、医療従事者、事務などの担当者のみを当面の対象としております。
どうぞよろしくお願いいたします。
2011年5月21日
東京電力(株)福島第一原子力発電所における労働者の健康と安全を確保するための10のポイント
2. 事業者は、労働安全衛生法その他の関連法規に基づいて労働者の健康と安全を守る取り組みを組織的に行い、二次災害を予防します。
3. 労働者は、事業者からの予防のための指示に従い、自らも健康を守る取り組みを実践します。
4. 健康と安全を確保する組織的な対応としては、1.労働者の健康管理(事前の健康状態の把握と日々の健康管理など)、2.作業に関連した健康リスク管理(熱中症、放射線の線量管理、事故の予防、不安への対応など)、3.事前の健康障害を予防するための教育、があります。これらの対応を充実させることにより、熱中症、放射線の影響による健康影響、作業に関連した心筋梗塞や脳疾患などの急性疾患、事故によるけがなどを予防できます。
5. 事業者は、作業に従事させる労働者の健康管理については、労働者の定期健康診断の結果に基づいて基礎疾患(高血圧、糖尿病など)を把握し、派遣前に産業医などの医師の面談を受けさせます。
6. 事業者は、毎日、作業開始前に、作業チーム毎に、労働者すべての体調について確認させ、発熱、下痢、腹痛などの症状のある方は作業現場に行かせないようにします。
7. 特に健康管理上留意すべき危険有害要因としては次の4つが挙げられます。
1)死亡するリスクとして最も高いのは熱中症です。熱中症は予防ができます。毎日の気温、湿度(WBGT:湿球黒球温度)の測定や予測をし、熱中症のリスクを評価します。なお、全身の保護具の着用しているため熱がこもりやすいため従来の基準よりも厳しく対応します。また、熱中症のおこりやすい作業や職場を特定し、事前の作業の計画作り、作業時間の短縮化、休憩の確保、休憩室におけるクーラーの設置、水分のこまめな摂取、クールベストの着用などを行います。
2)厳密な放射線の線量管理をすることで、急性・慢性の健康障害を予防し、作業者の不安を軽減します。保護具については適切な教育を事前に行い、作業中もペアとなりお互いに確認しあうバディシステムなどを採用します。
3)普段とは異なる作業環境のため、危険予知・ヒヤリハット報告を実践し、リスクアセスメントを行い、事故を予防します。
4)作業者の不安を軽減させるための情報提供を行い、相談できる場を提供します。
なお、事業者は、現場に入るすべての労働者に健康障害を予防するための必要な教育を行います。
8. 事業者は、現場作業に従事する人を特定することで管理をし、予防のための対策が不十分な事業者や個人を特定し、対応を求めます。
9. 事業者は、体調不良の方が受診できる場所(医療班など)があることを周知し、また健康相談ができるような場を提供します。
10. 事業者は、作業には十分な休息が必要なため、宿舎などの居住環境の改善に関する労働者の意見を集め、継続的に対応します。
2011年5月20日
医療機関における暴力対策ハンドブック(中外医学社)が出版されました。
出版されました。今回は病院におけるあらゆる暴力、パワハラ、いじめ
などもとりあげました。
アマゾンでもまもなく買えると思います。
http://www.chugaiigaku.jp/modules/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1156
医療機関における暴力対策ハンドブック
和田耕治,三木明子,吉川 徹(編著)
A5判 180頁
定価3,780円(本体3,600円+税)
ISBN978-4-498-07646-4
あらゆる医療機関で日常的に起こりうる暴言・暴力・セクシャルハラスメント・パ
ワーハラスメント・ストーカー行為といった頭の痛い問題について,その対策と予
防,発生時の対処,スタッフの行うべき取り組みをわかりやすく解説します.本書で
は,従来問題にされてきた「患者→職員」への「暴力」に限らず,今まであまり言及
されてこなかった「患者→患者」「職員→職員」「職員→患者」への「暴力」につい
てもフォローしています.
執筆者一覧(執筆順)
和田耕治 北里大学医学部公衆衛生学教室講師
三木明子 筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻准教授
吉川 徹 労働科学研究所副所長
黒田梨絵 筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻博士後期課程
鈴木まち子 前川崎市立多摩病院副院長・看護部長
岡田康子 (株)クオレ・シー・キューブ代表取締役
谷山悌三 元神奈川県警察秦野警察署長
池田勝紀 船橋市立医療センター救命救急センター医長
山口敏彦 筑波メディカルセンター病院渉外管理課課長
尾貴美子 前仁厚会病院看護部長
日下修一 獨協医科大学看護学部准教授
宮治 真 愛知県医師会総合政策研究機構プロジェクト室長/名古屋市立大学大学院
医学研究科客員教授
天野 寛 愛知県医師会総合政策研究機構主任研究員
加藤 憲 愛知県医師会総合政策研究機構主任研究員
塩入明子 がん・感染症センター東京都立駒込病院神経科
赤穂理絵 がん・感染症センター東京都立駒込病院精神科医長
鈴木典浩 前橋赤十字病院総務課長
推薦の言葉
医療機関は患者にとっても,医療従事者にとっても安全で,安心できる場所である
べきというのは言うまでもないことです.しかし,近年の医療を取り巻く環境の変化
により,一部の患者(さん)の中には医療従事者に対して不当なクレームや暴力など
の違法行為に至ることが課題となっています.また,つらい症状があったり,不安で
気持ちの余裕もなくなったりすることもあってか,病棟や外来においての患者同士の
トラブルもまれではなく,こうしたことにも医療機関は対策が求められるようになっ
ています.
本書では,対策の骨子として,院長や理事長などの管理者が方針として,「医療機
関を患者にとっても,職員にとっても安全で安心できる場にするためにいかなる暴力
も容認しないということ,そして被害にあった場合には組織として守る」ということ
を示すことが強調されています.また,本書で紹介されている医療機関の取り組みの
事例には組織として取り組む暴力対策の良好事例が豊富です.
残念ながら医療従事者にかかる業務の負担の増大や高度化もあってか,患者をケア
すべき医療従事者同士でもトラブルが発生しています.医療従事者の配慮が欠けて患
者(さん)に結果的に暴力となるような事例もあり,こうしたことが起こりうること
を想定して医療機関では対策を行う必要があります.最前線の取り組みからは,医療
機関での暴力対策を多面で新しい切り口を知ることができるでしょう.
本書では様々な優れた取り組みが示されていますが,どの医療機関も試行錯誤をし
ながら,安全で安心な環境作りができたことがうかがえます.そのためにも医療従事
者のひとりひとりが暴力を許されないものと認識し,さらには暴力を容認しない文化
をめざして時間をかけながら創り上げて行くことが必要です.
また,本書は医療機関だけでなく,今後さらに重要性が増す介護施設においても活
用できそうです.
本書をもとに,医療機関が自主的に暴力対策に取り組み,安全で,安心できる環境作
りを進めることでさらに医療の質を高めていただけると幸いです.
2011年4月
日本医師会常任理事 今 村 聡
推薦の言葉
「JRでも暴力急増,駅員受難」(朝日新聞1997年6月18日)という記事で,「首都
圏のJR駅や車内で,駅員や乗務員が酒に酔った勤め帰りのサラリーマンに殴られるな
どして負傷する事件が大幅に増えている.」と報じた.日常性の中に「暴力」が入り
込んできたのはこの頃ではないかと思う.
医療現場では何が何だかわからないうちに,自分自身に危害が及んでくることを認
識しておかなければならない.こうした訓練やプロトコルの確立が遅れている,めっ
たに起こらないからこそ見過ごされがちになるが,暴力は忘れた頃にやってくるので
あり,これからは「接遇」とともに「暴行から身を守る法」についても学習する必要
があろうと,当時,看護管理者であった私は書いている(井部,1997).
本書は,そうした問題認識に応えてくれるものである.本書での主張は明確であ
る.つまり,医療機関でのあらゆる暴力は許されるべきことではない,ということで
ある.暴力行為は犯罪であり,暴力行為者が患者であろうとなかろうと,暴力を受け
たという事実に変わりはない.対象の年齢や疾患で暴力の定義は変わることはない.
患者の安全や健康を守ることと同じくらい職員自身の安全と健康を守ることは大切で
あると述べている.そして暴力を生み出す職場の土壌を変えようと指摘している.
本書では,さまざまな暴力が「職員から職員」(1章),「患者(家族)から職
員」(2章),「患者から患者」(3章),「職員から患者」(4章)に発生すること
が論じられ,「医療機関での体制作り」(5章)が提案される.医療機関において暴
力を容認しない「文化」を醸成する組織改革のためにトップの覚悟と熱意が重要であ
ると説く.
2011年4月
聖路加看護大学学長 井部 俊子
2011年5月11日
東日本大震災の被災地における産業保健活動 6月10日 セミナー無料
平成23年度 第1回 かながわ健康支援セミナーのご案内
財団法人 神奈川県予防医学協会
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、平成23年度 第1回 かながわ健康支援セミナーを下記のとおり開催いたします。
つきましては、皆様方のご参加を賜りたくご案内申し上げます。
敬 具
記
1.日時: 平成23年6月10日(金) 14時00分~16時30分
2.場所: 神奈川自動車整備振興会 6階研修会室 (裏面案内図参照)
3.テ ー マ: 「東日本大震災の被災地における産業保健活動」
4.内容: 東日本大震災の復旧・復興に関わる方々は様々な危険有害要因にさらされる可能性があり、産業保健の観点からの対応が求められます。
災害の初期には、自衛隊や消防隊などある程度訓練を受けた人が対応にあたりますが、今後被災者自身が片付けなどを行ったり、またボランティア、民間の業者の労働者などの関わりが増します。あなたの会社の従業員も現地に行くかも知れません。こうした人々を危険有害要因から組織的に守り、二次災害を予防する必要があります。危険有害要因としては、1.生物学的要因、2.化学的要因、3.物理的要因、4.心理社会的要因があります。また、作業者の細やかな健康管理が必要です。これまでの産業保健活動をどのように応用するかを考え、今後の対策のあり方や課題を紹介します。
5.講師: 北里大学医学部公衆衛生学講師
和田 耕治
<主なプロフィール>
産業医科大学医学部卒
McGill大学産業保健修士・
ポストドクラルフェロー
新型インフルエンザ専門会議委員(現在作業班委員)
日本医師会勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員
*現在、被災地にて支援活動を推進しております。
参考となるサイト:http://square.umin.ac.jp/ohhcw/
または http://kojiwada.blogspot.com/
6.参 加 費: 無 料
7.申込方法: 同封のFAX申込書にて、お申し込み下さい。なお、ご質問等のある方は
FAX申込書にご記入下さい。
8.申込締切日: 平成23年6月3日(金)
9.問合せ先: 事務局 財団法人 神奈川県予防医学協会 業務部
電話番号 045-641-8522 担当: 雨宮 佐々木
以 上
<個人情報の取り扱いについて>
現在、本状を送付させていただいている皆様について、送付に必要な情報(お名前、団体名、住所など)を管理しております。これらの個人情報につきましては、当協会の個人情報保護方針に基づき、その収集・保存・利用について厳重な管理の下に運用しています。当セミナーに関する個人情報の開示、訂正及び削除を希望される場合には、お手数ですが業務部(045‐641‐8522)までご連絡ください。
2011年5月10日
津波によって運ばれてきた津波堆積物(ヘドロ)に関して知っておきたい10の点
1.津波堆積物(津波がもたらした土砂や泥)の性状は場所によって様々です。ヘドロ状の堆積物は有機物を含み、粒度が小さいため放置すると腐敗による悪臭の発生や乾燥による粉じん飛散が起こりえます。
2.津波堆積物には、海から運ばれてきたもの以外に、近隣の工場にあった物や貯蔵されていた化学物質なども含まれている可能性があります。
3.ヘドロを取り除く作業を行う際には、直接触れないように手袋をし、また直接吸い込まないようにマスクを着用します。洗浄や掃除のための機械を用いる際には、ほこりが舞い上がる可能性がありますので換気をよくし、できるだけ防じんマスクDS2(N95マスク)、ゴーグルを用います。
4.ヘドロを取り扱った作業をした後は手袋をはずして手洗いをします。特に食事の前には手洗いをこまめにします。
5.重機などを用いてヘドロやがれきなどを片付ける作業が行われている場には近づかないようにします。自宅の近隣などで行われる際には作業中は窓を閉めるなどでなるべく室内に入れないようにします。
6.ヘドロなどが粉じんを発生する場合には、水をまくなどすると一時的には軽減します。
7.個人では対応が難しいですが、ヘドロに対して紙シュレッダーくず、おがくずなどを用いた方法がこちらのサイトに示されています。(国立環境研究所津波堆積物への対応について(第二報)
http://www.nies.go.jp/shinsai/tsunami_sdm2_110406v2.pdf
8.ヘドロやがれきなどからの粉じんにより肺炎が発生するということが話題になっているようですが、呼吸器科医などへのヒアリングでは作業後にリスクがもともと高い高齢者などが細菌性肺炎を発症したというケースが多いようで、作業者などの事例は限定的のようです(今後もサーンベイランスなど必要)。粉じんを吸い込んだことが直接に肺炎の発症に影響したかは不明ですが、なるべくばく露を減らし、リスクの高い高齢者などはその他の作業をするなどしていただくとよいでしょう。
9.ヘドロの性状については分析業者に出せばある程度は分かるようですが、時間も費用もかかります。まずは人が触れない、近づかない、吸い込まないなどの対策が優先されます。
10.ヘドロは一般廃棄物として処理されています。自治体では一次集積場などに集めています。海洋に投棄することは法令で禁止されています。
和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学)
公衆衛生における倫理実践の原則(改訂版2.2)の日本語訳
公衆衛生における倫理実践の原則(改訂版2.2)の日本語訳
北里大学医学部公衆衛生学講師 和田耕治作成
(今後さらに読みやすく改訂する予定)
原文はこちらから
http://www.apha.org/NR/rdonlyres/1CED3CEA-287E-4185-9CBD-BD405FC60856/0/ethicsbrochure.pdf
目次
Ⅰ.序言
Ⅱ.倫理行動規範の裏づけとなる価値観と信念
Ⅲ.公衆衛生における倫理実践の原則 (ここが最も重要)
補足説明:
公衆衛生における倫理行動規範の論理的根拠
12の倫理原則それぞれの注釈
10の重要な公衆衛生サービスの対応と12の倫理原則
©2002 公衆衛生リーダーシップ学会(Public Health Leadership Society)
Ⅰ.序文
この倫理行動規範は、公衆衛生の実践における行動の重要な倫理原則について述べるものです。倫理原則の前提となる公衆衛生の将来展望の鍵となる価値観と信念についてもⅡに述べました。
公衆衛生は、我々が社会全体において集団の健康を維持することを保証すると理解されています。健康は、単に病気又は無気力ではない状態を言うのではなく、完全なる肉体的、精神的及び社会的に快適な状態とする世界保健機関の定義の重要性を強調します。
この規範は、新たな健康に関する倫理の提言でもなく、包括的な体系を示したものでもありません。どちらかと言えば、公衆衛生の倫理原則を明示するものです。いくつかの倫理原則を裏付ける基本的な信念は、人々の相互依存関係です。この相互依存性は地域社会の特質であります。公衆衛生は、地域社会の保険・衛生の維持を求めるだけでなく、個人の健康も地域社会における生活・生きがいなどと連動していることを認識するものです。
基本的に、この倫理行動規範は、明白に公衆衛生の任務を遂行する米国内の公的及びその他の施設を対象に作成されたものですが、従来の公衆衛生の枠外にあり、自らの業務が地域社会の健康に及ぼす影響を認識する機関、施設、個人はこの倫理行動規範が必要であり、有益であることを知るでしょう。
Ⅱ.倫理行動規範の裏づけとなる価値観と信念
以下に紹介する価値観と信念は、公衆衛生の将来展望の鍵となる重要な前提です。これらは、次の項(Ⅲ)で示す公衆衛生の倫理実践12原則の根拠となるものです。
健康
1.人間には健康の維持のために必要な資源へアクセスできる権利がある。
公衆衛生の倫理行動規範は、“自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利”を謳う世界人権宣言第25章を再確認します。
地域社会
2.人間は、本来社会的な存在であり、相互に依存している。
人間は友情、家族及び地域社会で話し相手を求め、お互いが関心を持ち、安全と生き残りをかけて相互依存関係を形成します。個人と個人の前向きな関係と公衆衛生施設間の協力は、健康な地域社会の表れでもあります。個々の人間の肉体的特徴に対する正当な関心と自ら決断をする権利は同時に、各人の行動が他の人々へ影響すると言う事実とバランスを取らなければなりません。
3.公衆衛生機関の有効性は公衆からの信頼に大きく依存する。
公衆衛生機関に信頼を寄せる要因には、次のような機関による行動を含みます:情報伝達、真実の告知、透明性(言い換えれば、情報を隠蔽しない)、説明責任、信頼性及び相互依存関係です。相互依存関係と情報伝達の最も重要な形態のひとつは、地域に対して話をすると同時に聞くことです。
4.協力は、公衆衛生のキーとなる重要な要素である。
社会の公衆衛生のインフラは、広範囲に亘る各種の政府機関と専門領域で構成されています。効果的であるには、我々は一緒にうまく働かなくてはいけません。更に、公衆衛生が新たに直面する挑戦へ立ち向かうには、新たな協力関係が求められています。
5.地域の人々と環境は相互依存的である。
人々は自然と自分たちの生活の為に作り上げた環境に依存しています。破壊された又はバランスを失った自然環境、誤った設計による又は劣悪な条件の人工的環境は、人々の健康に有害な副作用を及ぼします。反対に、人々は資源の消費と廃棄物の創出で自然環境へ多大な影響を与えることが出来ます。
6. 地域社会の各個人は、公開された論議に貢献する機会を持つべきである。
論議への参加は政府への直接方式もしくは代議制を通じて行なわれます。政策の検討・評価の過程では、懸念事項の表明が必ずしも最終的に政策として取上げられることを意味しなくても、議論へ参加したいと考えている参加者の全てが参加できるチャンスがあるのか、見極めるのは大切なことです。
7.地域社会の健康に関する基本的な要求を特定し、推進することは、公衆衛生に求められる最大の事項である。
どのように地域社会が構成されているかは、その地域社会の健康状態に反映されています。公衆衛生の最大の懸案事項は、社会の構造の根底に関するものである。いくつかの重要な公衆衛生プログラムは、その性格上治療と言う側面を持ちますが、全体として公衆衛生は根底にある原因と予防を絶対見失うことがあってはいけません。社会の構造は、健康の数多くの側面に影響を与えるため、より身近な原因よりも根本的な原因を扱うほうがより真の防止策となります。
行動を支える基礎
8.知識は重要であり、力の源である
我々は,健康について理解を深め、研究活動と知識の集積により健康を守る方法を追求します。いったん、健康を守る方法が明らかとなった場合、得られた知識についてある程度第3者と分かち合うという道徳的な責任が生じます。例えば、政策決定に参加するためには、関連情報へのアクセスが必要です。一方で、内々に提供された情報は保護する義務があります。
9.我々の公衆衛生に関する知識のほとんどは科学的根拠を基礎としている。
科学的方法は、地域住民の健康に必要な要因を特定し、健康を守り増進する政策とプログラムを評価する比較的客観的な方法を提供します。定量的及び定性的方法などあらゆる種類の科学的ツールと研究者との協力が必要です。
10.公衆衛生に関わるものは、分かっていることを基に行動する責任がある。
知識は道徳的に中立ではなく、しばしばアクションを必要とします。更には、情報は無益な興味本位で収集するものではありません。公衆衛生は、入手可能な情報をタイムリーな行動へと転換させることが求められます。また我々が知らない部分を埋めるための調査も求められます。
11.情報に基づいてのみ行動するのではない。
多くの事例では、当事者が必要とする全ての情報がない状況でも行動が求められます。また、公衆衛生の実践は、効率的またはコストベネフィットが最適と計算されなくても、根底にある価値観、各人の人間としての尊厳に基づいた政策が必要とされます。このような事例では、価値観こそが、限定された情報の適用又は情報がない状況で行動をうながすことになります。
Ⅲ.公衆衛生実践の倫理的な原則
1.公衆衛生は、健康への有害な影響を予防するために、疾病の根本的な原因、及び健康のための必要なことに取り組むことを主としなければならない。
2.公衆衛生は、地域住民の一人一人の権利を尊重しながら、地域住民全体の健康を実現すべきである。
3.公衆衛生の政策、プログラム及び優先順位は地域住民からの意見を取り入れる機会を得ながら展開し、評価すべきである。
4.公衆衛生は、全ての地域住民が利用可能な健康維持に必要な基本的な資源などへのアクセスを保証することを目的に、特に孤立しやすいまたサービスを受けていない地域住民との関わりを高めることをめざすべきである。
5.公衆衛生は、健康を守り、増進する政策とプログラムを効果的に実施するために必要な情報を求めるべきである。
6.公衆衛生を担当する施設は、政策とプログラムの決定に必要な情報を地域社会へ提供し、実施にあっては地域社会の同意を得るべきである。
7.公衆衛生を担当する施設は、資源や住民からの委任された情報に基づいてタイムリーに行動すべきである。
8.公衆衛生プログラムと政策は、地域社会の多様な価値観、信念及び文化を想定し、敬意を払って多様なアプローチを取り入れるべきである。
9.公衆衛生プログラムと政策は、身体的及び社会的な環境を高める方法で実施すべきである。
10.公衆衛生施設は、公表された場合、個人又は地域へ危害を及ぼす可能性がある情報の機密については、それを保持すべきである。例外は、個人又は第3者へ著しい危害を与える可能性が高いことを前提に正当化されなければならない。
11. 公衆衛生施設は、その施設の従業員が専門家としての能力を保有することを保証すべきである。
12. 公衆衛生施設とその従業員は、住民の信頼を醸成し、公衆衛生施設の有効性を築くため、協力と提携すべきである。
補足説明:
公衆衛生の倫理実践原則の論理的根拠
住民の健康を確保、保護する使命は、本質的に道徳的なものです。それは他人の福祉についてケアする義務を伴うとともに、その様な使命を遂行するためある種の法的権限を有することを意味します。健康を確保するために権力を行使する必要性と同時に権力の濫用の可能性を避けることは、公衆衛生倫理上の難問であります。
最近まで、公衆衛生の倫理面については、明確に宣言されるのではなく、暗黙に想定されていました。しかしながら、社会は次第に公衆衛生倫理への明白な注意を払うことを要求する様になってきました。このような要求は新たな可能性を生み出す技術的進歩に由来し、それと共にエイズ・ウイルス(HIV)の到来、梅毒のタスキーギ研究などの様な職権乱用、及び単に1つの文化、宗教的価値を適用することはすでに可能ではなく、多様化の真っ只中で共通の価値観を作り上げなければならない、益々多元的な社会など、倫理上のジレンマと新たな挑戦が生じつつあります。
歴史的に医療施設は、公衆衛生施設に比べ医療の倫理的要素についてより明確でした。公衆衛生の懸案事項は、しかしながら、医療のそれと完全には一致しません。従って我々は、医療倫理の原則を公衆衛生のそれに言い換えることはできません。例えば、医療と対照的に公衆衛生は個人ではなく、住民に、治療ではなく予防についてより関係します。従って、公衆衛生が関与する範囲は、現在病気ではない人達であり、その人達にとって医療行為のリスクと利益は直ちに関係しません。
倫理行動規範で何が成し遂げられるか?
公衆衛生の倫理行動規範は、公衆衛生の特徴的要素とそれを体現又は対応する倫理原則を明確にします。それは公衆衛生を提供する住民と地域社会に施設の理想について明確にします。倫理行動規範は、従って、公衆衛生施設と医療担当者を導く指針の目標として、又彼等が責任を負うべき基準としての役割を果たします。
倫理行動規範は、一般的には比較的短いため、入り組んだ、複雑な倫理的問題点の縺れを解く方法を提供するように設計されていません。そのプロセスは、特定の課題に関する複合的な要因について審議と討議を必要とします。一般的に倫理行動規範は又、特定の論争を解決する手段を提供しません。しかし、倫理行動規範は、公衆衛生の懸念に関する論争中の当事者へ、その論争に於いて考慮すべき課題のリストと原則を提供します。
12の倫理原則それぞれの注釈(Ⅲを参照)
1. この倫理行動規範の原則は、疾病の予防と健康増進だけでなく、最も根源的なレベルについても優先されるべきものです。しかしながら、同原則は、公衆衛生がいくつかの緊急を要する原因及びいくつか治療的役割にも関係することを認識しています。例えば、治療可能な感染症を治療することは、感染症が他人へ感染することを防止するうえで重要です。倫理行動規範のあちらこちらで使われる“公衆衛生”と言う用語は、公衆衛生に関する政府機関及び学校を含みますが、ただしそれに限定せずに、公衆衛生分野の全体を表わします。
2.この原則は、個人及び地域社会、両者の懸案事項を評価するため、公衆衛生の共通したニーズを特定します。公衆衛生の永続的な緊張状態を解決できる倫理の原則はありません。しかし、公衆衛生は、地域社会の利益は出発点であり、地域社会の利益が、公衆衛生の最大の関心事であることを強調します。同時に、公衆衛生のために警察力を行使する場合、個人の権利へ注意を払う必要があります。
3.意見提供のプロセスは、直接方式又は代議制を取ります。いずれの方式も、合意を得るためのプロセスを含みます。民主的プロセスは煩わしいかもしれないが、一端政策の決定がなされると、公衆衛生施設は緊急事態に素早く対応する使命を帯びます。地域社会からの提案は、政策又はプログラムが実践された時点で終わる訳ではありません。又、地域社会は、公衆衛生施設がプログラムを計画通りに実施しているか、予定された効果を挙げているか、評価する必要があります。住民が、このような意見を提案し、それが聞き入れられていると感じる能力は、公衆衛生施設に対する住民の信頼を醸成、維持するうえで決定的に重要な意味を持ちます。
4.この原則は、2つの課題を扱います。第一の課題は、地域住民の全てが意見を言うこと。第二は、公衆衛生は、地域社会で十分サービスを受けてない者、社会的に無視された者に対して特別な関心をもつと言うことです。社会は富裕層が享受する保健・衛生資源を提供することはできませんが、ある程度の水準で標準的な最小限の資源を確保することは可能です。倫理行動規範は、不法行為により社会的に取り残された者に対して、保健・衛生を保証するための行動を規定することは出来ません。倫理行動規範は、全ての人の健康に必要な資源を確保する原則だけを強調します。各公衆衛生機関は、倫理行動規範を達成するため、どのようなリスクに対応するのか、自身で決断しなければならない。
5.この原則は、活動を知らせるためにも情報を求めることを使命とします。プログラムを評価する情報の重要性も同様です。
6.この原則は、民主的過程について3番目と連動しています。そのような民主的プロセスは、情報が行き届いた地域社会に依存しています。公衆衛生施設が得た情報は、公共財産としてみなされ、一般市民へ提供されます。この声明は、個人レベルの倫理原則であるインフォームド・コンセント(状況をよく説明して相手の同意を得る)を地域社会レベルへ適用した必然的帰結でもあります。とくに、プログラムが適宜評価無しに作成された場合、地域社会はその潜在的リスクと利益について知らされるべきであり、その実施に当たっては、地域社会の同意を前提としています(ただし、この原則ではどのようにしてその同意を得るべきか規定していません)。
7. 公衆衛生は、受動的よりもどちらかと言えば能動的であり、情報は興味のためだけに収集することはありません。しかし、行動能力は入手可能な資源と機会、及び互いに競合するニーズに制限されます。更に、緊急状態に対応する能力は、第3の倫理原則である民主的プロセスを通じて実行すると言う使命にも左右されます。
8.公衆衛生プログラムには、それらニーズの多様性を想定した柔軟性、プログラムの効果に著しい影響を与える将来の見通しを組み入れなければなりません。文化や性別などの多様性の分類は、意図的に言及されませんでした。
9. この原則は、人々の相互依存性と人と物理的環境の相互依存性を前提に由来します。それは医薬の“害を及ぼすな”と言う倫理原則に似ていますが、より肯定的な表現で記述されています。
10.この声明では、どのような情報が保護され、情報公開はどのような判断基準によるかという質問への回答です。この声明の狙いは、控えめであり:情報の“所有”に本来備わっている責任について、明白に記述しています。それは、情報に基づく行動と情報の共有に関する倫理原則6及び7を補足するものであります。
11.専門能力の判定基準は、疫学や衛生教育などの個々の専門的職業別に規定されなければいけません。
12. この声明は、公衆衛生の協調的な性質を強調すると同時に、人々の信頼を傷つけ、又はプログラムの有効性を損なう利害相反を避ける必要性について肯定的に記述しています。
10の重要な公衆衛生サービスと12の倫理原則の対応
最も重要な公衆衛生サービス2 | 倫理原則 |
1.地域社会の健康問題を特定するため、健康状態をモニターする | (5) 情報を収集する (7) 情報に基づいて行動する |
2. 地域社会の健康問題と健康被害について診断・調査する | (5) 情報を収集する
|
3.健康について人々に教え、教育し、力を与える | (4) 支援運動とエンパワーメント (6) 情報提供 |
4.健康問題の特定と解決に地域パートナーシップを動員する | (12) 協調 |
5.個人と地域社会の健康に関する活動を支援する政策と計画を作成する | (1)健康を保護・促進し、健康危機の根本的な原因に取り組む (3)地域社会からの意見を取上げる (5) 情報を収集する |
6.健康を保護し、安全を確保する法律と規則を執行する | (2) 個人の権利を尊重しながら地域社会の保健・衛生を実現する。 (3) 地域社会からのフィードバック (7) 情報に基づいて行動する |
7.人々を必要な個人保健サービスと結びつけ、個人保健サービスを利用できない場合、健康管理の提供を確保する | (4) 全ての人に基本的な資源の提供を推奨し、権利を与える。 (8) 多様性を取り込む |
8.有能な公衆衛生及個人医療の要員を確保する | (11)専門的能力 |
9.個人及び集団ベースの保健サービスの有効性、アクセス及び品質を評価する | (3) 地域社会からのフィードバック (5) 情報を収集する |
10. 健康問題へ新たな洞察と革新的な解決法を研究する | (5) 情報を収集する
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