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2011年3月19日

生理が急に始まった時、注意する4つのポイント

 避難所生活のなかで急に生理の出血が始った時には、次の点を確認して対応しましょう。なお、予定外の生理が始まってしまっても、良くあることなので特に心配しなくても良いです。問題になるのは、1)妊娠に関係している場合、2)出血量が多すぎる場合のみです。

1.妊娠だった場合は1週間以内には病院へ
 予定外の出血は妊娠に関連した出血である場合があります。尿の妊娠反応が陽性だった場合には、適切に対処しないと、自分自身の命に関わる場合があります。たとえ避妊していても妊娠することはあります。どんな形でも性交渉があった場合には妊娠を確認しましょう。
 もし妊娠だった場合には、まずその妊娠が「正常な」妊娠かどうかを確認する必要があります。妊娠は特に病院で治療などを行わなくても、ほとんどの場合は問題ありません。しかし、子宮外妊娠の場合には、命を失うことがあります。1週間以内に産婦人科を受診して、超音波で診断してもらいましょう。

 また、流産がとても気になると思います。一般的には、妊娠しても20%程度は残念ながら流産となってしまいます。これは、災害などが無くても変わりありません。流産については、はっきりした治療などもありませんから、赤ちゃんを信じて待つしかありません。また、もし流産になったとしても、それは避けようのないことであり、病院でできる「治療」はほとんどありませんから、その赤ちゃんの運命と言えます。自分を責める必要はありません。

2.出血の量が多い時は病院へ
 生理の出血量は1回に200ml程度(コップ1杯くらい)とされています。合計の出血量が多い場合には止血などが必要になります。合計で500ml以上の出血が続くような場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。非常時に生理用品がない場合には、以下の代用品を検討してください。

3.生理用品について
 赤ちゃんや高齢者用のおむつでも代用可能です。現在のような生理用ナプキンが広まる前は、綿や布を使って対応していました。水分を吸いとってくれる紙や布があれば、一時的にそれで代用できます。布は洗ってあるものであれば、この用途なら充分に使えます。

4.生理用品・ナプキンの作り方
1)長そでTシャツの腕部分を、そで口から20センチほど切る。(わっか状のものが、2個できる)
2)吸水性のあるタオルなどを折り畳み、わっかの中に入れると、ナプキンができる。
3)さらに、ガムテープを、切り口の両側からはみ出るよう出せば、下着に固定も可能。

参考:

太田寛(北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、日本産婦人科学会専門医)

被災地の治安を守るために予防すべき4つの暴力

 
食料、水、避難場所の確保といった日常生活上の問題で混乱するとともに、医療機関や警察などの社会インフラに混乱をきたすようになると、治安が悪化する恐れがあります。​​害後の暴力を予防するためには、必要な人への支援提供と、日常生活が円滑に進むような仕組みづくりが必要です。

1.子どもへの暴力
1)子どもへの思いやりを持ち続けてください。子どもは両親の反応に強く影響されます。
2)赤ちゃんが泣きやまないときは、なぜ泣いているかを把握するために、食べ物、おむつの交換、服の着せすぎや薄着のしすぎがないかなどの基本的な欲求が満たされているか、おむつかぶれなど病気や痛いところがないかを調べます。散歩に連れ出すのもいいでしょう。泣きやませるために、肩、腕や足を揺さぶると、けがや死亡につながる恐れがあるので、決してしません。赤ちゃんがたくさん泣くのは当然のことですが、親にとってはストレスになります。無力感や怒りを感じた際には、少し赤ちゃんから離れて時間をとり、穏やかな気持ちを取り戻して赤ちゃんに接します。
3)親は常に、子供が今、どこにだれといるか、把握している必要があります。
4)信頼できる人の助けを得て、あなた自身も休息をとります。
5)家族と離れ離れになっている子どもがいたら、行政の担当者などに知らせてください。
6)虐待や育児放棄を疑った場合には周囲の人は、訪問した医師や保健師や、児童相談所などに相談してください。

2.家庭内での暴力
1)誰かが暴力的になっているのを目撃したら、危険な状態にある人を逃がすなど距離を確保します。もしあなた自身に危険が及ぶおそれがある場合には周りの人などに知らせます。
2)自分が危険な状態にあることを感じたら、友人や家族、診療所などに助けを求めます。 
3)アルコールを飲ませないようにします。
4)住む所や仕事を失うような困難な状況下では、人間関係に大きなストレスを感じるものです。つらいと感じたら十分休息をとったり、心の健康の専門家の面談や電話サービスを活用します。
5)避難所、地域や学校でのボランティア活動に積極的に参加して、他の人との関わりを持つようにします。

3.性的暴力
1)誰かが性的暴力の被害にあっていたら、助け出しましょう。もし自分に危害が及びそうな場合は、警察に助けを求めます。
2)女性は外出する際は、トイレに行く時なども含めて、単独行動は避けます。
3)人がたくさんいる安全な場所にいるようにしましょう。
4)アルコールは不安やストレスをより強くします。また、アルコールを飲む場では性的暴力を受ける可能性もあります。
5)もし自分や周りの人が被害にあったら、親友や家族に話して十分にサポートを受けます。そして警察に連絡することをためらいません。

.若者の暴力
1)他人を尊重し、違いを認めましょう。ストレスや心配事があっても、他の人をいじめたりからかったり悪口を言ったりしてはいけません。
2)清掃など被災地の復旧・復興活動に参加させます。
3)アルコールや薬物(麻薬)を使用する人には近づきません。これらの物質は不安やストレスを高める作用があり、危険な場所に身を置く機会にもつながります。
4)大声で怒鳴ったり、暴力をふるったりせずに、話し合いで解決するようにしましょう。
5)もしだれかが暴力をふるおうと計画しているのを知ったら、狙われている相手と信頼できる人に知らせましょう。もし報復される恐れがあるときは、警察にも連絡します。

担当:松井亜樹、末廣有希子、和田耕治

被災地に対する医療支援の考え方 

 報道では、津波が直撃した高度被災地の映像が繰り返し流されています。しかし、壊滅的な被害を受けた地域のみならず、その周辺では、多くの医療機関が通常の診療体制を維持できずに苦しんでいると思います。

 専門性の高い支援チームによる緊急援助だけが、いま被災地で求められている活動ではありません。医師や看護師のみならず、薬剤師、栄養士、一般のボランティアなどが必要とされているはずです。

 ここでは、災害後の時系列にしながら、どのような被災地の医療支援が求められているか、求められることになるか、私の個人的な経験に基づき考えてみたいと思います。

 なお、憶測で支援活動を開始するのは厳に慎みましょう! かならず現地の医療機関、ボランティアセンター、地域医師会、行政機関に問い合わせ、ニーズがあるかの確認をしてください。そして、支援者は交通手段、および衣食住について自己完結できる装備で現地入りすることが原則です。決して、現地のリソースを浪費しないこと。かつ、ヒットアンドアウェー方式、つまり支援を終了したら速やかに被災地を離れることが基本です。

■ 発生直後から5日後まで

 災害直後の超急性期においては、現地病院、診療所の機能を破綻させないための物理的支援が求められます。最低限の医療機器を動かす発電機、夜間での診療を可能とする小型投光機があれば、日暮れた後でも、負傷者が殺到する救急外来を維持することができます。おそらく5日目までは外科系の患者がメインだと思います。つまり、ひたすら縫合できる医者が必要です。

 また、入院患者を抱える医療機関では、病院食を持続的に提供できるかどうかが存続のカギとなります。ライフラインが断絶している場合には、飲料水、そしてプロパンガスとコンロにより基本的な調理ができるような支援が必要です。

 こうした状況では栄養士の知識が必要です。ありあわせの支援食材で、入院患者ごとの病院食(たとえば低カリウム食、潰瘍食など)を工夫しなければならないからです。多くの支援食材には、保存性を優先した塩分が高めのものが多いようです。肝障害、心不全、腎不全などの患者むけ特殊食材については、ピストン輸送で支援することも考えてください。

 透析患者や糖尿病、心不全などの重症患者については、被災地では管理できないかもしれません。こうした診療が可能な医療機関への転送も検討すべきだと思います。

■ 6日後から14日後まで

 6日を経過すると、続々と医療支援チームが到着しはじめ、各自治体行政の災害対策本部ですら、医療支援の全体像がつかめなくなります。発生当初とは異なる意味での混乱がはじまります。

 日本赤十字社(以下、日赤)らを中心とした大手の医療支援チームが集合し、地元の医師らと活動状況を交換して、受診者数の動向や症例提示を行うようになるでしょう。このころになると遊軍型の支援活動は、ときに混乱を助長する可能性があるので注意してください。ある程度、あなたが継続的かつ組織的に活動することができているのなら、独自の立場で支援者会議に参加することも可能ですが、地元の医療機関や大手の支援団体の一部になるよう心がけるべきです。あなたの活動を行政やボランティアセンターが把握していることを常に確認してください。

 各地で、日赤が被災地医療において指導的な役割を果たしていることに違和感を持たれる方もいるかもしれません。日赤は「日本赤十字社法」という法的根拠があって行動しており、同法33条に「国の救護に関する業務の委託」というものがあり、非常災害時における国の行う救護に関する業務が日赤に委託できることになっています。あるいは「災害救助法」では、「政府は日本赤十字社に、政府の指揮監督の下に、救助に関し地方公共団体以外の団体又は個人がする協力の連絡調整を行わせることができる」(第32条の2第2項)とされています。つまり、行政システムの空白期間には、日赤が業務を代行したり、施設の整備をすすめることが認められているのですね。もちろん、日赤が支弁した費用を国が補償することにもなっています。

 この他、日赤は「災害対策基本法」で指定公共機関とされており、国の災害救護事業の一部となっています。日赤が指揮を始めたら、活躍の場を「奪われた」と感じて反発するのではなく(そういう陣取り合戦を好む団体が少なくありません)、日赤を核とした緊急医療支援体制として、地元医師会等も参加したチームワークを形成するよう心がけてください。

 さて、この頃より被災地の医療機関には、定期薬を内服できずにいた慢性疾患の患者が増悪して運ばれるようになります。つまり、内科系の医師にニーズがシフトします。主な疾患は、高齢者の脱水や肺炎、小児や成人の喘息発作、糖尿病や心不全の急性増悪などが予測されます。この傾向は、地域の医療機関が復興し、主治医による定期外来診療が再開されるまで継続します。

 さらに、外傷患者の創部感染による全身状態の悪化も多発しはじめます。人手も資材も不十分な被災地の医療機関では管理できないので、診療が可能な医療機関への転送が必要です。事前に、医療機関ごとに後方支援病院を決定しておいた方がよいかもしれません。

 車中泊を続けている被災者(ときにボランティア)が、長時間同じ姿勢で寝続けることによるエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)を発症しはじめます。姿勢のほかにエコノミークラス症候群を引き起こしやすい環境として、乾燥と寒冷があります。つまり、いまの被災地は発症の好条件と言わざるをえません。

 エコノミークラス症候群により静脈内に形成された血栓が飛んで肺塞栓を引き起こすと、呼吸困難と胸痛などの症状が出ます。さらに進行すると、血圧低下、意識消失などを生じ、重症な場合には、そのまま心肺停止します。非常に怖ろしい疾患であり、大切なことは予防です。乾燥を防止し、水分を補給し、休息時にも適度な運動を行うこと。そして、下肢の静脈内に血栓がないかを早めに診断してもらうこと。つまり、この時期には、ポータブルエコー機器を使える技師による被災地の巡回検診が求められます。

 また、混雑したトイレに行かずにすむよう水分制限をしている避難者が多いことにより、尿路感染症の患者も多発しはじめます。これを予防するため、とくに女性向けのトイレゾーンの設置と衛生状態の確保が急務です。

■ 15日後から1ヶ月後まで

 多くの地域でライフラインは復旧し、医療体制は平時に近づきつつあります。しかし、それまで高度の緊張状態で仕事をつづけていた現地スタッフが疲労で倒れはじめます。限界状況での判断を続けてきた幹部クラスから、子供を含む多くの被災者の死を目撃してきた医師、看護師、薬剤師、放射線技師、理学療法士、栄養士、ケースワーカー、事務や清掃の担当者にいたるまで、傷ついた心と体を休めることが必要です。

 おそらく自宅は散乱したままで、使命感に従って仕事を続けてきたはずです。彼らに休息をとらせるために、様々な医療の専門性を有する職種や一般のボランティアが、日常業務の代行支援を必要としているはずです。

 緊張状態がはずれ、疲労に気がつく頃、風邪をひく人が増えてきます。また、場合によってはインフルエンザの流行をみるかもしれません。避難所の感染対策については、また別に書いてみたいと思いますが、今から考えておくべきことはワクチンの接種です。とくに基礎疾患のある方々を守るためにも、避難所での生活が長引きそうな方々については、老いも若きもワクチン接種にご協力いただいた方がよいかもしれません。

 あと、当たり前のことなのですが、発熱したボランティアは即刻被災地退場です。とくに、熱を出したまま避難所などにゼッタイ入らないこと。避難所で流行する多くの感染症は「最初はボランティアが持ち込むもの」であることを自戒しましょう。

 また、避難所で生活している高齢者は、寒冷下で毛布にくるまって、ほとんど動かずにいるため筋力が衰え、関節が拘縮(可動域制限を起こす状態)してきます。できれば早い段階からリハビリを開始しておくべきですが、その後、こうした高齢者が寝たきり状態になるかどうかの重要な時期にさしかかります。理学療法士、整体師、ヨガなどの専門家が多数必要になってきます。

 新潟県中越地震のとき、小千谷市の保健師らが震災後3週間の時点で実施した被災者約1万7千人の健康状態調査では、234人が健康相談など何らかの支援が必要と判断されています。そのトップは「心のケア」で41%で最も多く、健康相談(27%)、医療機関の受診(25%)、食事・トイレなどの介助(18%)と続いています。自覚症状では不眠や憂うつ、意欲低下など精神的な症状が目立つという結果でした。

 つまり、この時期には、孤立した被災者がうつ状態にないかを確認することが必要です。周囲が復興し、家族と再会し、新たな生活の目途が立ち始めるなか、一部の方は焦燥と絶望を行き来しているかもしれません。こうした被災者の自殺を予防することも含め、避難所などでの声かけ、話し相手が求められるようになります。

 ただし、災害の記憶を引き出させるような話題は避けるべきです。災害のたびに重ねられている失敗だと私は思っていますが、「小児の被災者に災害の絵を描かせるのは禁忌」です。記憶を固着化し、PTSDへと誘導すると言われています。こうした治療法(ポスト・トラウマティック・プレイセラピー)が臨床心理士によって行われることはありますが、あくまでトラウマ化している小児に対する専門的なアプローチであることをご理解ください。

 小児については、忌まわしい記憶を忘却することが可能なので、ボランティアレベルでの支援介入では「思い出させないことが重要」なのです。メディアも含めて、災害の体験を子供に語らせたり、描かせたりしないようにしてください。

 高血圧などの慢性疾患をもつ中高年の方々は、明らかな症状を認めていなくとも、「血圧が高いのではないか」、「血糖値が不安定なのではないか」、「不整脈が出ているのではないか」といった、漠然とした健康不安を抱えながら家の片付けなどに追われていることが多いものです。避難所などを医師や看護師が定期的に訪れて「体調を見守ってさしあげる」ことは、震災後の様々な不安のなかで「ひとつの安心」を提供する活動となると思います。

 ただし、巡回診療で血圧などを測定して「ちょっと高いですね」と事実だけを伝えて、そのまま何もしないのであれば、単に「不安を助長する活動」にすぎませんね。私は、症状のない被災者の血圧や血糖を測定するのは反対です。基本的には健康不安への傾聴とアドバイスを行ない、とくに希望があれば血圧を測って差し上げればよいでしょう。

 避難所を対象とする巡回診療の重要な役割は、かかりつけの診療所や病院の再開を告げることだと思います。ですから、地元保健師らと連携しながら各医療機関の復興状況について情報収集をこまめに行い、医療が復興しつつあることの広報が必要な時期と言えるでしょう。地域の保健医療資源を把握し、今後の地域医療の担い手となるのは、やはり地元の医療機関です。被災地医療支援の最終的なゴールとは、患者さん一人一人を安心した気持ちのまま、かかりつけ医へと誘導することですから…。

■ 1ヶ月後以降

 震災から1ヶ月が経過すると、避難所も救護所も縮小されはじめるでしょう。そして、被災地の医療は緊急支援より地域主体へと引き継がれる段階となります。

 ただし、復興の足取りは弱者の歩幅というよりは、むしろ強者の論理でことが進められがちです。また、問題にフタをすることで、災害の現実から逃避しようとするメンタリティが働くことも多いと思います。実際、平時の介護現場ですら、家族が「うちは大丈夫」と言っていながら、奥の部屋で高齢者が厳しい状態に置かれていることが珍しくはないわけで…。

 過去の災害事例を振り返ると、行政は避難所の閉鎖を思いのほか早く進めるという印象が私にはあります。復興を急ぐ空気と追いつけないでいる被災者、とくに高齢者の方々を長期で関わるボランティアは代弁することができます。ただし、彼らを抱え込むのではなく、行政と連携して地域の医療や福祉のなかに居場所を探してさしあげるようにするべきです。少なくとも、地域医療の担い手となりえない外来ボランティアの手に委ねられるものではないですね。

 そして、とても大切なことですが、疎かになり後味を悪くしてしまう問題があります。それは、引き際の問題です。あらゆる支援活動は、開始する段階で支援終了の目安を設定しておく必要があります。それは、被災地の医療機関の復旧状況や避難所の人数などが指標となるかもしれませんね。

 ただ、被災地の状況は刻々と変化するため、ボランティアは自らの活動に耽溺せず、地域全体の状況について把握しておく必要があります。そのためにも、自治体や医師会などと連携をとりながら、地域の復旧状況を逐次確認し、また他の支援団体の動向にも目を配っておきたいものです。どのような援助も、長期化すると現地のシステムに組み込まれ、依存関係を生み出す恐れがあります。漫然と支援活動が継続しないように配慮すべきですね。

■ おわりに

 テレビ報道をみていると、専門的な災害医療を背景としたチームばかりが活躍しているように見えるかもしれません。瓦礫の下の医療であるとか、多数の負傷者を前にしたトリアージ技術といったイメージが先行しがちですね。でも、こうした専門性の高い災害医療とは被災直後(およそ72時間以内)の特殊な状況において求められるものです。国内外の被災地支援に関わった経験から申し上げますが、時間的にも空間的にも圧倒的に求められていたのは、被災地の病院・診療所において平時と変わらぬプライマリケア・サービスを安定して提供できるよう支援する活動でした。

 支援を躊躇する理由はありません。あなたにもできることがあるはずです。ただ、大切なことは現地のニーズをきっちりつかみ、「支援したい」という自らのニーズに溺れないことですね。ここで私が書いたことも、イメージの一助に過ぎないことをご理解ください(あらゆる被災地は刻々と変化しながら助けを求めています)。おおよその震災医療支援の流れをつかんでいただいたら、まずは友人のつてなどを利用して、あるいは支援活動団体などに申し込んで、あなたならではの支援をはじめていただけることを期待しています。


さらなる理解のために(参考となる文献):
1) 田中良樹:被災現地の災害医療と避難所医療.治療 84(4): 1286-1291, 2002. <神戸震災の経験から災害時の医療ニーズについて整理されている>
2) 山本義久:大災害時の情報収集と医療.治療 84(4): 1317-1320, 2002. <大災害時の医療情報収集の手段としてインターネットの有効性を紹介している>
3) 石井昇:災害医学教育の現状と課題.救急医学 25(1): 85-90, 2001. <わが国の災害医学教育の現状と問題点を指摘し、具体的な教育方法について提言している>
4) The Sphere Project. 2004/アジア福祉教育財団難民事業本部:スフィア・プロジェクト-人道憲章と災害援助に関する最低基準.アジア福祉教育財団, 2004. <多くの援助機関の経験に基づき作成された災害援助の国際的イニシアチブ>
5) 高山義浩 : 新潟中越地震におけるプライマリ・ケア支援活動 . Journal of Integrated Medicine 15(8) : 662-664, 2005. <筆者による震災地域における医療支援活動についての報告と検討>

高山義浩(沖縄県立中部病院)

2011年3月16日

被災地の妊娠・出産された方が知っておきたい10のこと

1.こまめに、十分な水分を取ります
 尿が15回以上出れば水分は足りていると考えて良いでしょう。脱水はいかなる場合でも避けなければなりません。腎臓に病気がある人以外は、水分を取りすぎてむくむことは、あまり考えなくて良いでしょう。

2.避難所の管理者などに妊娠している(可能性がある)ことを伝えます
 妊婦はしっかりとした栄養と多めの水分を割り当ててもらう必要があります。がまんして状態が悪くなると、周囲にさらに負担がかかります。遠慮せずに伝えます。医師や保健師にも早めに伝えます。

3.手足を動かして運動し、同じ姿勢でじっとしないようにします
 出産前は出血に備えて、血が固まりやすい状況になっています。同じ姿勢で長時間いると、血管の中で血が固まって、肺や脳の血管を詰まらせて重篤な症状になることがあります(エコノミークラス症候群)。定期的に手足を動かすようにします。足先だけでも動かすとよいです。

4.石けんを用いて良く手を洗います
 下痢やかぜ、インフルエンザなどの予防に手洗いは重要です。

5.みんなで咳エチケットを守ります
咳をしている人はマスクをします。狭いところで多くの人が過ごすため、感染が広がりやすくなります。

6.悲しい気持ちになったら周りの人に話します
あなたは一人ではありません。一人で耐えなくてもいいのです。話すだけでも楽になりますし、何かの解決法が見つかるかもしれません。

7. 持病や常用薬がある場合は、医師や保健師に伝えます
 早めに対処することで、悪化を防ぐことができます。治療が必要な状態になると、他の人の負担になります。遠慮せずに伝えましょう。

8.かかりつけ医にこだわらずに、妊婦健診を受けましょう。
 定期的なチェックは元気な赤ちゃんを産むためにも、とても大事です。

9.陣痛、出血、破水などの場合は、直ちに病院へ行きます。
 通常の出産の時と同じです。動けない、症状が強いなら救急車を使ってもかまいません。

10.赤ちゃんには十分な母乳またはミルク(水分なら何でもOK)をあげましょう。
 赤ちゃんが元気で尿が出ていれば、水分は足りているでしょう。しかし、赤ちゃんは脱水になりやすく、自分で訴えることができません。非常時は母乳やミルクにこだわらず、水分をあげましょう。ただし、水分は煮沸したものやペットボトルに入った水を用います。

太田寛(日本産婦人科学会専門医、北里大学医学部公衆衛生学)