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2011年4月17日

被災した建物に入る際に自分を守るために知っておきたい10のポイント

1.被災した建物は安全でないことを前提にします。

 被災した建物は、安全なように見えても、さらなる余震などで倒壊の恐れなどがあります。できるだけ専門家によって建物の安全が確認されてから入ります。また、臭い、異音がしたらすぐに安全な場所に退去します。子どもたちは安全が確認されてから入るようにします。



2.さらなる安全を確保するために準備をします。 

 予期せぬ火災に備えて消火器をそばに確保します。保護具(ヘルメット,保護めがね,保護手袋,安全靴,保護マスク)を適宜装着します。重量物を取り扱う作業(一人あたり20Kg以上)は一人で行いません。また、適切な休憩時間は確保するように計画的に行います。暖房器具・換気器具・エアコンディショナーなどは、使用する前に点検し、きれいにしてから使用します。



3.感電を予防します。

 感電の危険性がないことを確認するまではメインのブレーカーを切ります。特に、電気回路や電気製品が濡れている,水の中やそばにあれば直ちにメインのブレーカーを切ります。主電源を操作するために,水に入る必要がある際には,電気技師など専門の方に相談します。また、水の中に立って作業をしているときには,絶対に電気機器の電源を操作しないでください。



4.家をきれいにして、物が腐ったり壊れたりしないようにします。

 水を吸収したもの、乾燥できないもの、きれいに出来ないものは捨てます。

 水漏れがあれば修理します。湿気を除くために、ファン、除湿装置を使用し、ドア・窓を開けます。防腐処置として、約4リットルの水に1カップの漂白剤を混ぜた水や漂白剤混合物で洗い、堅いブラシで表面をこすり洗いし、きれいな水ですすいでから、乾かします。水を吸収しない素材で覆われたもので津波の水にさらされたものは、まず石鹸と水で洗い、20リットルに1カップの漂白剤を混ぜたもので消毒し、空気乾燥させましょう。漂白剤を用いる際は保護具を着用し、換気のために窓とドアを開けます。漂白剤とアンモニアは決して混ぜないで下さい。 発生したガスを吸い込むことにより死亡することがあります。



5.危険物があることを想定し、適切に対処します。

 危険物があった際にはまずはどのようなものであるか、また状態を確認します。自分で対応できないと考えた際には専門の業者や役場などに相談をします。もし自分で取り扱いが可能な際でも,適切な保護具を着用します。また危険物が手についたりした場合には直ちに洗浄し、必要に応じて医療機関を受診します。車のバッテリーを取り扱うときには,絶縁用の手袋を着用し,注意深く対応して下さい.バッテリーから漏えいしている酸などには触れないようにして下さい



6.一酸化炭素中毒は死に至ることもあるため、最大限の注意を払います。

 屋内や車庫などの換気の良くない場所では、発電機・圧力ワッシャー・木炭使用のグリル・キャンプストーブまたは他の燃料を燃やす装置を使用すると一酸化炭素中毒の恐れがあります。また、出入り口、窓、空気孔などの空気取り入れ口の近く(屋外であっても)にも、これらの装置を置かないようにします。一酸化炭素は無臭無色であり、死亡する危険があります。



7.発生したかびが健康を害することを知り適切に対応します。

 津波や台風,洪水の後は,湿度が上昇するため,カビが繁殖しやすい環境です.喘息やアレルギーや,呼吸器疾患を持っている方は,カビを吸い込むことにより持病が悪化する可能性があります。カビに曝露すると,鼻水,目のかゆみ,喘息,皮膚のかゆみ,などのアレルギー症状が生じます.また,慢性閉塞性肺疾患の方は,カビが肺に感染しやすい状態になっています.症状が出た場合には,すぐに専門家に相談をして下さい.

カビは,見た目と臭いで認知することができます.洗濯,消毒ができないもの(例:マットレス,カーペット,パッド,絨毯,布張りの家具,化粧品,動物のぬいぐるみ,幼児用・乳児用玩具,枕,スポンジゴムで覆われた物,本,壁紙,紙製品など)は,取り除くか破棄して下さい.

汚水や下水が浸み込んでいる化粧ボード,保温材は取り除くか破棄して下さい.表面が固く滑らかな器具(例:フローリング,木造や金属の家具,調理台,調理器具,洗面台,その他の衛生器具)は,熱湯や食器洗い用の洗剤で十分に洗浄して下さい.



8.作業の合間や終了時には手をこまめに洗います

 手になにが付着するかわかりませんのでこまめに手を洗うようにします。できるだけ石けんを用いて、清潔な水で洗い流します。また衣服にも泥などが付着するのでなるべく早く洗濯し、玄関などで脱ぐなどして生活の場に泥などを持ち込まないようにします。



9.けがを予防し、けがをした場合には直ちに清潔な水で洗います。

 被災した建物にはガラス片や釘など様々なものがあるためけがを予防することが第一です。しかし、もしけがをした場合には直ちに清潔な水で十分に傷を洗います。また必要に応じて医療機関を受診します。破傷風菌が傷から入り、発症すると死に至ることもあります。10年以内に破傷風のワクチンを接種していない人は予防的破傷風ワクチン接種も可能でしたら行うことも良いでしょう。ボランティアとしてこのような作業をされる方は接種してから現地に入りましょう。



10.安全運転を心がけます。

 交差点などでは一旦停止してよく見てから横断します。早めの点灯をし、徐行運転し、車間距離を十分にとってください。路上のごみ・残骸に注意します。シートベルトを締める、飲酒運転をしないなど普段通りにします。



担当:田中完(新日本製鐵(株)名古屋製鐵所産業医)、江口尚、和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学) 



参考:米国CDC.Clean up safely after a disaster


2011年3月30日

ボランティア活動で病気やけがをしないために知っておきたい4つのこと

1.ボランティアに参加する前に
 1)体調は万全ですか?
 体調が悪い時、特に発熱、下痢、嘔吐、咳等が見られる時は、被災地に入るのを控えましょう。被災地の外から来たボランティアが、被災地に感染症を拡げてしまうことがよくあります。
 現地入りする前に、破傷風、インフルエンザ、麻疹のワクチンを接種しているか確認し、必要に応じて追加接種をしましょう。また、医療に関わる人はB型肝炎ワクチンの接種が必要です。

 2)ボランティア組織に入りましょう
 被災地のボランティア組織などに登録して、現地のルールに従って行動しましょう。組織で動くことで、チームで作業することができ、お互いに安全を確認したり、シフトを組んで適切な休憩をとったりすることができます。

 3)ボランティア保険に入りましょう
 被災地は危険なところが多いですから、ケガをしたり病気になったりすることも考えられますので、できれば保険に入っておきましょう。ボランティア団体に所属している場合は、団体として保険に入っている可能性がありますが(念のため確認しておいてください)、個人としても契約することができます。最寄りの社会福祉協議会が窓口ですので、出発する前に入っておきましょう。掛け金は年間数百円ですが、保証される手術保険金でも数十万円までと少額ですので、普段から入っている傷害保険と併用することが一般的なようです。自分が普段から入っている保険内容も確認しておきましょう。


2.復旧作業に関わるときは、自分がケガや病気にならないように
1)けが
 動いている重機の近くは危険なので、近づいてはいけません。
 小さな傷口でも、泥や汚染された水にさらされると、化膿してしまったり、破傷風のような命に関わる病気にかかってしまったりすることがあります。
 もしけがをしてしまったら、すぐにきれいな水と石鹸で洗い流して、破傷風予防の処置が必要かどうか、医師に相談してください。破傷風は発症した場合には20%50%が亡くなってしまう致死率の高い病気ですが、今回の震災でも、すでに破傷風にかかった人が報告されています。

2)腰痛
 重いものを一人で持ち上げると、腰痛を引きおこすことがあります。おおむね22kg以上の重量物を運ぶときは、無理をせず2人以上で作業をするようにしましょう。

3)酸欠・硫化水素中毒
 津波で海水をかぶった建物の中は、十分な換気をすることができない場合があります。海水が入ってから長時間放置されていると、貝などが大量発生したり、そこにあるものが腐ったり、室内に大量のカビが増殖していたりすることがあります。そうすると、微生物が室内の酸素を消費してしまい、酸素欠乏症になる危険性が高くなります。酸素濃度が極端に低い空気を吸うと、一回呼吸するだけで酸欠で即死してしまうことがあり、非常に危険です。また、いろいろなものが腐るときに有毒な硫化水素が発生してしまうこともあります。大量の硫化水素を吸入すると、短時間であっても命に関わることがあります。
 海水がかぶった閉鎖空間、建物の中は、非常に危険ですので、立ち入る際には十分な換気が確保できるかを確認し、できるだけ消防や自衛隊などに相談しましょう。また、酸欠・硫化水素中毒のおそれがある場所に倒れた人がいても、救助しようとして無防備に飛び込むとさらに助けに入った人が酸欠で被災するので大変危険です。必ず、消防や自衛隊に助けを求めましょう。

4)有害化学物質による中毒
 災害現場には、石油、家庭用の薬品、農薬など、いろいろな化学物質が漏れ出しています。一部は混ざって化学反応をおこし、想像もつかないような物質が発生しているかもしれません。また、ゴミを野焼きにすると、有害な煙が発生する可能性もあります。少なくとも、変なにおいがするものには近づかないようにしましょう。
 ただし、有害化学物質の中には、一酸化炭素のように無味無臭のものも少なくありませんので注意が必要です。気分が悪くなったら、すぐに新鮮な空気のあるところまで逃げ出しましょう

5)脱水・栄養
 トイレ事情が悪いと、水分摂取を控えてしまう人がいますが、十分に水分を摂らないと、脱水症になってしまうことがあります。また、体を動かすには大量のエネルギーが必要です。十分な水分・栄養摂取(特に炭水化物、1食につき1000kcalを目安に)を心がけましょう。


3.保護具の使用を忘れずに
 作業時は必要に応じて、長袖・長ズボン、ヘルメット、ゴーグル、ゴム手袋、防水長靴(つま先と中敷きが金属で補強された安全靴)、保護マスクなどを着用してください。手袋は、内側はニトリル製などの耐切創手袋、外側はニトリルかラテックスの使い捨て(48mmの厚さ)と、二重にすると有効です。軍手では不十分です。


4.避難所での生活支援に関わるときは、体調管理に気をつけましょう
十分に休養と栄養をとって体調管理に努めてください。作業後や食事前、トイレの後は、流水と石鹸で手洗いをしましょう。清潔な水が確保できない場合は、速乾性消毒アルコールを使用しましょう。
 食中毒を予防するために、食事の調理や配膳の担当者は、体調の異変時(発熱、下痢、はきけ、手指のけがなど)には速やかに申告して、交代してもらいましょう。
 咳が出る時は、咳エチケット(マスクをする、ティッシュで口と鼻を覆う)を守りましょう。万が一体調を崩した場合は、迷わず離脱する勇気も大切です。

参考:http://www.cdc.gov/niosh/topics/emres/pe-workers.html
担当:松井亜樹、末廣有希子、河津雄一郎、和田耕治

2011年3月19日

被災地の治安を守るために予防すべき4つの暴力

 
食料、水、避難場所の確保といった日常生活上の問題で混乱するとともに、医療機関や警察などの社会インフラに混乱をきたすようになると、治安が悪化する恐れがあります。​​害後の暴力を予防するためには、必要な人への支援提供と、日常生活が円滑に進むような仕組みづくりが必要です。

1.子どもへの暴力
1)子どもへの思いやりを持ち続けてください。子どもは両親の反応に強く影響されます。
2)赤ちゃんが泣きやまないときは、なぜ泣いているかを把握するために、食べ物、おむつの交換、服の着せすぎや薄着のしすぎがないかなどの基本的な欲求が満たされているか、おむつかぶれなど病気や痛いところがないかを調べます。散歩に連れ出すのもいいでしょう。泣きやませるために、肩、腕や足を揺さぶると、けがや死亡につながる恐れがあるので、決してしません。赤ちゃんがたくさん泣くのは当然のことですが、親にとってはストレスになります。無力感や怒りを感じた際には、少し赤ちゃんから離れて時間をとり、穏やかな気持ちを取り戻して赤ちゃんに接します。
3)親は常に、子供が今、どこにだれといるか、把握している必要があります。
4)信頼できる人の助けを得て、あなた自身も休息をとります。
5)家族と離れ離れになっている子どもがいたら、行政の担当者などに知らせてください。
6)虐待や育児放棄を疑った場合には周囲の人は、訪問した医師や保健師や、児童相談所などに相談してください。

2.家庭内での暴力
1)誰かが暴力的になっているのを目撃したら、危険な状態にある人を逃がすなど距離を確保します。もしあなた自身に危険が及ぶおそれがある場合には周りの人などに知らせます。
2)自分が危険な状態にあることを感じたら、友人や家族、診療所などに助けを求めます。 
3)アルコールを飲ませないようにします。
4)住む所や仕事を失うような困難な状況下では、人間関係に大きなストレスを感じるものです。つらいと感じたら十分休息をとったり、心の健康の専門家の面談や電話サービスを活用します。
5)避難所、地域や学校でのボランティア活動に積極的に参加して、他の人との関わりを持つようにします。

3.性的暴力
1)誰かが性的暴力の被害にあっていたら、助け出しましょう。もし自分に危害が及びそうな場合は、警察に助けを求めます。
2)女性は外出する際は、トイレに行く時なども含めて、単独行動は避けます。
3)人がたくさんいる安全な場所にいるようにしましょう。
4)アルコールは不安やストレスをより強くします。また、アルコールを飲む場では性的暴力を受ける可能性もあります。
5)もし自分や周りの人が被害にあったら、親友や家族に話して十分にサポートを受けます。そして警察に連絡することをためらいません。

.若者の暴力
1)他人を尊重し、違いを認めましょう。ストレスや心配事があっても、他の人をいじめたりからかったり悪口を言ったりしてはいけません。
2)清掃など被災地の復旧・復興活動に参加させます。
3)アルコールや薬物(麻薬)を使用する人には近づきません。これらの物質は不安やストレスを高める作用があり、危険な場所に身を置く機会にもつながります。
4)大声で怒鳴ったり、暴力をふるったりせずに、話し合いで解決するようにしましょう。
5)もしだれかが暴力をふるおうと計画しているのを知ったら、狙われている相手と信頼できる人に知らせましょう。もし報復される恐れがあるときは、警察にも連絡します。

担当:松井亜樹、末廣有希子、和田耕治

2011年3月17日

避難所の高齢者を支援する際に知っておくと役に立つ10のポイント

1.コミュニケーションの取り方を工夫します
眼鏡や補聴器を付けているか確認し、大きな声ではっきりと簡潔に話します。聞きとれて理解できたかどうかの確認も必要です。

2.転倒に注意します
住居スペースに転倒の可能性があるようなものが落ちていないか、階段や廊下の照明は十分か確認します。必要に応じて歩行を介助します。

3.見当識障害を予防します
部屋に時計やカレンダーを備えたり、使い慣れたものを置く、部屋はできるだけ静かに保ち、柔らかい光の照明を設置するなど、見当識障害が起こらない工夫をするようにします。

4.慢性疾患と食事の問題を確認します
処方薬を内服しているか、食事療法が継続できているか確認し、必要な治療が継続できるようかかりつけ医と連絡を取るか、または新しい担当医を探します。家族と離れ離れになった場合に備えて、処方薬と食事療法の内容が書かれたメモを持たせるとよいです。

5.大切な人を亡くした悲しみに寄り添います
悲しい気持ちを受容してそばにいてあげることが大切です。 

6.できる限りのことはしていただきます
自立した生活が脅かされることを恐れています。自立と威厳を保つために自分のことは自分でさせます。

7.福祉のお世話になることを恥だと考える傾向があります
支援を受けることを拒否する場合は、自身が払った税金からの援助であることを説明してみます。

8.衣服の着替えや入浴の状況を確認します
 衣服を着替えたり、入浴がおっくうになります。衛生状態を保つためにも必要です。

9.脱水を予防します
水分をとっているか、脱水の兆候(落ちくぼんだ目、口や皮膚の乾燥)はないか気を配ります。若者と比べてのどの渇きを自覚しにくく、また薬の影響で、脱水になりやすいので、要注意です。食事の他に1リットルは水分が必要です。

10.困っていることがないか気を配ります
家族や医師に困っていることを話さず、自分で解決しようとする傾向がありますので積極的に声をかけます。

担当:末廣有希子、和田耕治

2011年3月16日

初期の段階で被災地に入る際に感電を予防する4つの約束

初期の段階で被災地に入る際に感電を予防する4つの約束

 日本ではあまり話題にはならないようですが、諸外国では大きな課題のようです。日本でも被災後すぐには注意が必要です。

1.絶対に、切断された電線に触らない。

2.水溜りの中に切断された電線があるときは、車で入らない。
もし、送電線があなたの乗った車に触れてしまったら、乗ったまま、送電線から離れます。もし、エンジンが止まってしまったら、車のキーをそのままにして離れます。また、その車や電線に触らないよう、周囲の人に警告します。
その後、電力会社に電話するか、連絡してもらうよう周囲の人に頼みます。電力会社の専門家以外には、決してあなたの車(乗り物)に触れないよう、周知します。

3.電化製品が、濡れたり、水につかったら直ちに通電を止めます。
1)メインのブレーカーから電気を切ります。ただし、ブレーカーに近づくために貯まった水に入ったりしてはいけません。
2) 電化製品の電源のスイッチに触れません。
3)停電から回復したときに、配線が切れていたり、火花が飛び散ったり、何かが燃えたり、こげた臭いがするようなら、メインブレーカーを直ちにオフにして下さい。

4. 感電した人(疑いも含む)に絶対に触れません。
触れるとあなたが感電します。
1)可能であれば、周囲の電源をオフにしてください。オフにできない場合は、段ボール、プラスチック、木など電気を通さないものを間に挟んで、あなたと感電した人を電源から遠ざけてください。
2)電気から感電した人を離せたら、呼吸と脈拍を確認してください。心拍が止まっていたり、呼吸が止まりそうに遅く、浅くなっている場合は、すぐに心臓マッサージを開始してください。呼吸していて、失神、蒼白、ショック兆候がみられる場合は、横に寝かせて身体と足を上げて血流が頭に行くようにします。
3)やけどした皮膚に直接触れたり、水庖を破ったり、衣服を脱がせたりしません。

高原しおん JR東日本健康推進センター
橋口克頼 パナソニック
伊藤裕康 三菱樹脂
河津雄一郎 平和堂
和田耕治

2011年3月14日

寒さのなかで作業する人が自分を守るために知っておきたい10のポイント

1) 食事をきちんと摂ります
作業には多くのエネルギーが必要となるため、脂肪の多い食事でカロリーを確保します。血糖値を確保するために充分な炭水化物も摂取します。

2)
水分を十分に摂ります
トイレに行きたくないという思いから水分を制限したくなりますが、寒冷環境では、喉の渇きが抑制されるため、頻繁に温かい水分を摂り、脱水を予防します。ただし、アルコールやカフェイン、ニコチンは、血管拡張を誘発し、利尿が促進されるため望ましくないです。

3)
衣服は重ね着をして保温に努めます
体温を逃がさないということが保温にとって基本です。保温性の高い下着などを活用します。汗をかいたり、水で衣服が濡れたりしたときは、体温が奪われるため、乾いている衣服に着替えます。暑いと感じたときは、上着で調整します。子供や高齢者は体温を失いやすいので、成人以上に保温に努めます。

4)
手、足や目などの保護します
指先やつま先は冷えやすいため、手袋、靴下を着用します。紫外線とグレアから目を保護するためにサングラスなどを着用します。ただし、金属製のメガネ、腕時計は皮膚温を低下させやすいため、着用を避けます。

5)
こまめに休憩を取ります
 屋外での作業時間の目安は、気温が-10
~-25なら50分程度とし、温かい部屋で少なくとも30分の休憩時間を確保します。これは、寒冷環境の作業に習熟し、適応した健康な成人男子が、ほぼ無風の状態で作業する際の基準です。風がある状態では、予想以上に体温が低下します。0℃以下でもこまめに休憩をとります。
循環器系に病気がある人や高齢者の場合は衣服の防寒対策をさらに行い、作業時間を短くするといった配慮が必要です。

6)
凍傷を予防します
冷えによる手指などの痛みやしびれは、作業が非効率になるだけでなく、凍傷に至る危険信号です。感覚が麻痺していることもあるので、ゆっくり暖めます。

7)
複数人で行動します
複数人で行動し、互いの安全を確認します。

8)
移動する際には安全を確保します
雪のある場所を歩いて移動するのは怪我の危険性がある上、体温を奪われやすいので、避けます。歩いてある程度の距離を移動する際には、目的地や到着予定時間を誰かに伝えます。予定時間を過ぎても到着していない場合は、警察などに通報します。

9)
屋内の一酸化炭素中毒を防止します
石油ストーブは換気ができる状態で使用する。また、屋内で発電機、グリルなどを絶対に使用しません。換気を行いつつも、ドアや窓の不要な開閉を避け、室内の熱を逃がさないようにします。隙間があればタオルなどでふさぎます。

10)
屋内火災を予防します
破損した電気コードは使用しません。延長コードも極力使用しません。暖房機器の近くに子供を一人にしません。
参考資料
ILO
産業安全保健エンサイクロペディア(第4版)
日本産業衛生学会 許容濃度の基準(2010年)
労働安全ハンドブック(第2版)
担当:奈良井理恵(産業医大衛生学)、和田耕治

災害現場で活動する時の5つのポイント


災害現場で作業していると、自分自身の精神や身体の状態をチェックすることの必要性を忘れがちになります。しかし、自分自身を守ることは、現場で作業に集中するためには必要なことです

1.自分のペースを守りましょう
災害現場での作業は数日から数週間におよぶ長丁場です。健康を保つために、可能な限り規則正しい生活をしましょう。特に、規則正しい食事や睡眠は極めて大切です。無理をせずチームのスケジュールや交代時間を守りましょう。

2.頻繁に休憩を取りましょう。
災害現場は危険ですから、長時間作業することによる精神的な疲労は、ケガの原因になります。意識的に、できれば作業現場から離れた場所で休憩を取るように心がけましょう。特に、飲食するときには、できるだけ清潔な場所を探しましょう。

3.水分・栄養をしっかりとりましょう。
水やジュース等で水分を充分にとるように心がけて下さい。また、健康を保つために、いろいろな食物を食べるようにしましょう。特に、炭水化物を多く摂るようにしましょう。

4.他のメンバーにも注意しましょう。
あなたの同僚は作業に熱中しすぎて、危険が迫っているのに気付いていないかもしれません。

5.自分のメンタルヘルスに気を配りましょう。
(1)指揮命令系統や組織、設備の故障など、どうしようもないトラブルを抱えると、ストレスに感じてしまうことがあります。変えようがない事実があるということを認識し、受容することが必要です。
(2)人に何かを話したいと思った時には、できるだけ話をするようにしましょう。自分の経験したことについて話をするタイミングは自分で決めることが大切です。ある出来事について話をすることは、その出来事を追体験することになる恐れがありますので、どこまで話すかは自分で決めて下さい。
(3)自分がふさぎ込んだ気持ちになることを許してあげて下さい。今あなたは困難な状況にあるのですから。
(4)同じような考えや、夢、フラッシュバックが繰り返しおこるのは当然のことです。それらと戦おうとしないで下さい。これらは、時間をかけて減少していきます。
(5)できるだけ頻繁に、家族や友人とコミュニケーションを取るようにしましょう。
(6)公的なメンタルヘルスサポートがあれば、利用してみましょう。

災害現場で作業をする人は、重傷の人々(子供や大人)と接したり、死体や体の一部を見たり、同僚の死を経験したりすることによる、いわゆる「トラウマ」を経験する可能性があります。

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参考
トラウマは、経験した時だけでなく、数週間や数ヶ月経った後にでも、仕事をする能力を低下させてしまうような非常に強い症状を生じることがあります。具体的には、以下のような症状が考えられます。

・身体の症状
胸痛、呼吸困難、ショック症状、疲労、嘔気/嘔吐、めまい、発汗、動悸、のどの渇き、頭痛、視覚障害、歯ぎしり、身体の痛み

・認知に関する症状
錯乱、悪夢、見当識障害、過度な/低すぎる用心深さ、集中力低下、記憶力の低下、問題解決能力の低下、よく知っている事柄や人のことが分からなくなる

・感情の症状
不安感、罪悪感、悲嘆、否認、重篤なパニック発作、恐怖感、イライラ感、感情がコントロールできない、抑うつ気分、挫折感、自責感、他人を責める気持ち

・行動の症状
強度の怒り、引きこもり、感情の爆発、食欲不振/過食、酒量の増加、じっとしていられずうろうろする、性機能の変化

※特に、胸痛、呼吸困難、ひどい痛み、ショック症状(浅い呼吸、脈がはやい、脈が弱い、吐き気、身体のふるえ、皮膚が青白く湿っている、錯乱、瞳孔が開くなど)があった場合には、大至急医療にかかるようにしましょう。

強い感情は異常な状況において「普通の反応」であることを覚えておきましょう。
ご担当いただいた先生方
多田隈潔・西本真証・石丸知宏 産業医大産業医実務研修センター
黒石真紀子 西日本旅客鉄道株式会社 健康増進センター
荒薦優子 三菱電機(株)
田中優子 和歌山労災病院 脳神経外科
河津雄一郎 平和堂統括産業医
どうもありがとうございました。


参考
http://www.cdc.gov/niosh/docs/2002-107/pdfs/2002-107.pdf

洪水の復旧作業には様々な危険が伴うことを認識しましょう 知っておきたい13のこと とても大事


洪水の復旧作業には様々な危険が伴うことを認識しましょう 


復旧に関わる人や外部からのボランティアの方は経験や体力に差があることを認識し、お互いに安全が確保できるようにすることが求められます。
復旧作業は中長期的に続くことを認識し、精神面、身体面の障害を予防しましょう。


1.感電に注意しましょう
(1)洪水時、近くに水がある場所で高電圧の電気機器があると、感電のおそれがあり、危険です。主電源(ブレーカー等)を切り、その後は専門家による安全の確認がなされるまで、電源を入れないようにしましょう。
(2)発電機を使用する場合、起動する前に電源を入れておくと感電の恐れがあるので、電源を切っておきましょう。
(3)切れた電線の付近の作業は感電の危険性が高いので、急務でなければ、専門家に任せましょう。


2.一酸化炭素中毒を未然に防ぎましょう
(解説)洪水時の復旧活動では発電機を使用する機会が多いですが、これらの機器は一酸化炭素を発生させる恐れがあります。一酸化炭素は吸引することで致死的な一酸化炭素中毒を引き起こします。発電機を含む、ガソリンを使用する機器は必ず屋外で用いるようにしましょう。


3.筋骨格系の障害を予防しましょう
(解説)洪水時の復旧作業は重量物の運搬作業が多く、手、腰、膝、肩を痛める危険があります。特に重量物の運搬では、腰痛に対する注意が必要で、こうした事を未然に防ぐため、重量物は2人以上で協力して運搬すること。可能であれば運搬用機械を用いるようにしましょう。


4.しっかりした防寒を行いましょう
(解説)冷たい水に浸かっての作業は低体温を引き起こします。低体温を予防するためには、ゴム長靴、しっかりした防寒着の着用が推奨されます。また、湿った着衣は体温を奪うため、気を付けましょう。人目のあるところで作業をする、水面から離れて、しっかり休息をとるといった事も重要です。


5.重機の取り扱いは専門家に依頼しましょう
(解説)不慣れな人、資格を持たない人が重機を取り扱うことは、二次災害につながる恐れがあります。重機の取り扱いは必ず専門家に依頼しましょう。


6.周囲の地盤、建物の安全性を過信しないようにしましょう
(解説)洪水によって、地盤、道路、建物は強度が弱っている可能性があり、一見、安全に見えても、崩壊の恐れがあります。むやみに立ち入らないようにしましょう。


7.有害物質に注意しましょう
(解説)洪水時に溢れた水には、タンク、ドラム、パイプなどから漏れ出た農薬や有機溶剤などが含まれている可能性があります。内容物のわからない容器にむやみに触れないようにしましょう。もし、内容物に触れたら、しっかりと洗浄し、何らかの症状が出た場合は、早急に医療従事者に連絡しましょう。


8.火災に注意しましょう
(解説)洪水が起きた後は、消防用水の不足などから、火災が起きた際に十分な消火活動ができない可能性があります。復旧作業を行う際は、できる限り、消火器などを準備したうえで行いましょう。


9.溺水に注意しましょう
(解説)泳力に自信がある人でも、災害時の水たまりなどの中では溺水する恐れがあります。水がある場では、一人作業を避け、ライフジャケットを着用しましょう。また、乗り物の中で、脱出できずに溺水する可能性もあります。深さのわからない場所では、車や重機を運転しないようにしましょう。


10.軽微なけがもしっかり初療を行いましょう
(解説)軽微なけがや、やけどでも、汚染された水に暴露されると感染の危険があります。すべての傷をきれいな水とせっけんで洗った上で、早期に医療従事者に相談しましょう。破傷風の予防接種は特に重要です。


11.十分な保護具を準備しましょう
(解説)二次災害を防ぐため、保護具の着用を心がけましょう。ヘルメット、ゴーグル、手袋、安全靴、耳栓など。


12.閉鎖空間での作業の危険性を認識しましょう
(解説)ボイラー、炉、パイプライン、ピット、浄化槽、下水槽、貯蔵タンクなどの閉鎖空間で作業をする際にはその危険性を認識する必要があります。出入り口が限られていること、換気が悪いこと、スペースが狭いことなどが挙げられます。有害ガスの充満による窒息、ガス爆発なども考えられるので、不用意に近づかないようにしましょう。作業の必要があれば、専門家に依頼しましょう。


13.精神、身体面の疲労に気を付けましょう
(解説)災害発生時は、精神的な負担と身体的な負担が合わさり、ストレスに起因する疾患やけがの発症の可能性が高まります。家族、近隣住民と支えあい、可能であれば、精神衛生の専門家と相談することがこれらの予防につながります。作業の優先順位をつける事、しっかりと休養をとることなども重要です。




謝辞:産業医科大学 産業医実務研修センター尾土井 悠先生にご協力いただきました。

2011年3月12日

津波の後の復旧作業における労働者の安全と健康を守る10の点~2004年インド洋津波に学ぶ~

津波の後の復旧に関わる労働者やボランティアの方は安全と健康を守るための対策を知り、実行する必要があります。作業者の中には経験がない人もいるので、互いに安全を確保しながら作業を進めます。

1.感電を予防します
自然災害の後に感電が起こりえます。感電を防止するために、清掃活動に参加する人は、次の手順を実行することが求められます。
電気回路や電気機器の近くに水がある場合には、メインのブレーカーまたはヒューズパネルの電源を切ります。電気は、専門の電気技師の確認が終わるまで入れません。もし電源がオフになっていることが確認されない場合には水のあるところに入らない、また地面のぬれているところで電気機器をさわらないようにします。絶対に切れた電線に触れないようにします。
電線が切れた地域での掃除などをする場合には、電気会社に連絡し、送電の停止などを行います。頭上の送電線の近くではしごなどを動かす際には特に注意が必要で、不注意な接触がないように細心の注意を払います。

2.一酸化炭素中毒を予防します
洪水の後の片付けには、ガソリンまたはディーゼルポンプ、発電機などを使用することがあります。これらの装置は、無色、無臭で致命的な「一酸化炭素」を発生するため、こうしたガソリンを用いる機械は屋外で使用し、屋内に持ち込まないようにします。

3.筋骨格系障害を予防します
片付けの作業により、手、腰、膝、肩などに深刻な筋骨格の障害を起こすことがあります。泥などを手で運んだり、建材を運んだりするときは特に腰痛への注意が必要です。こうした障害を予防するために2人以上のチームを使い、一人あたり20Kg以上のものを運ぶのは避け、機械を用います。

4.寒さ・暑さ対策をします
24以下の水につかったり、働いたりすると体の熱が失われ、低体温になります。低体温のリスクを減らすためにもゴムのブーツ、暖かい洋服、単独作業をしない、水の外に頻回に出る、可能な限り乾いた洋服に着替えるなどします。
 また、暑い季節には熱中症の対策も必要です。

5.地盤の不安定性を考慮します
洪水の水は、歩道、駐車場、道路などを破壊します。水によって破壊された建物や地面が安定していることを期待してはいけません。津波に持ちこたえた建物も倒壊の危険性があります。洪水で破壊された建物は専門家による確認の前に中や周りで働いてはいけません。もし建物が動いたり、変な音がしたらすぐに立ち退きます。また余震による倒壊にも注意します。

6.危険物を管理します
洪水の水には、タンク、ドラム、パイプなどからの重油、農薬などが含まれている可能性があります。消防署や自治体などとの連絡なしに不明なコンテナを移動しません。
潜在的に汚染された可能性のある地域での作業には、皮膚への接触や蒸気の吸入をさけるための適切な防護服を着用します。農薬やその他の有害な化学物質にさらされた可能性のある皮膚は頻回にしっかりと洗います。

7.溺水に注意します
たまった水に入ると泳げたとしてもおぼれる可能性があります。車の中にいる人が溺水する可能性も高いです。深さが不明の場所に車や重機で入らないようにします。単独作業の禁止や洪水の水がたまった近くで作業をする際にはライフジャケットを着用します。

8.保護具の装着と応急処置をします
浸水した地域での作業では、次の保護具が必要になります。
ヘルメット
ゴーグル
手袋
安全靴、防水ブーツ
チェーンソー、ブルドーザー、送風機、乾燥機などの機械からの騒音は、作業者の耳鳴りや聴覚障害をおこします。お互いに叫ばないと伝わらない場所では耳栓をします。
 また保護具をしていたとしてもけがややけどをすることがあります。汚染された水に曝露されると大変危険です。すべてのきずはきれいな水で洗いましょう。また、作業中の切創に対して破傷風の予防接種を確実にします。


9.閉鎖空間での作業には十分に注意をします
ボイラー、パイプライン、ピット、浄化槽、下水タンクなどの閉鎖空間では有毒ガスの発生、酸欠、または爆発の可能性があり死亡事故につながる可能性があります。多くの有毒ガスや蒸気は目に見えず、またにおいもないので、安全かどうかを感覚で判断してはなりません。
閉鎖空間には十分なトレーニングを積んでいなければ絶対に入ってはいけません。もし閉鎖空間に入る必要がありトレーニングを積んでいなければ消防に相談しましょう。
閉鎖空間とは、入口または出口が限られた範囲しかあいていない、不十分な自然換気、連続した作業のためのスペースが想定されていないといった場所が該当します。

10.ストレス、長時間労働、疲労を予防します
長時間の労働や、家が破壊されたり仕事を失ったりすることで非常に大きなストレスを感じます。このようなストレスにさらされている作業者はけがや感情的な事件がおこりやすくなり、またストレスに起因する疾患を発症しやすくなります。家族、近所の人、メンタルヘルスの専門家による支援はストレスに関連する疾患などの予防につながります。
疲労を予防するために、復旧や清掃の優先順位を設定し(日や週単位で)、身体的な疲弊を避けます。また、睡眠を十分にとり、休息をこまめにとり、疲弊しないようにします。


和田耕治