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2011年4月19日

復旧作業や片付けを行う人が知っておきたいほこり(粉じん)・アスベストに関する7つのポイントと防じんマスクの正しい装着法

PDFがこちらに掲載されました。


一部は以下に掲載しますが、PDFを活用ください。(4月14日改訂版)

東日本大震災の被災地では、自宅の片付けや復旧作業で発生するほこり(粉じん)を吸って、のどの痛みや咳が続く、またさらに悪化して肺炎・気管支炎になる事例も報告されています。こうしたほこり(粉じん)から自分を守るための7つのポイントを紹介します。

1. 復旧現場では、ほこり(粉じん、アスベスト、カビなど含む、以下粉じん)が肺や気管などの呼吸器へ悪影響(慢性の咳、肺炎、呼吸機能の低下など)を与える可能性があります。とりわけ建材や断熱材に多く使われているアスベストは目に見えない細い繊維で十数年後に石綿肺や肺がん、中皮腫などの悪性腫瘍を発生させることがあります。そのため職場などの組織は復旧現場で吸い込む可能性のあるほこりの有害性について学び、従業員が理解しやすい情報を提供します。

2. 地震・津波後の復旧の現場におけるがれきから発生するほこり(粉じん)には、どのような有害な化学物質が含まれているかわかりません。できる限りほこり(粉じん)を吸い込まないように作業します。復旧作業を指示する組織は呼吸用保護具等を従業員に提供します。

3. 復旧における作業では粉じんを95%以上カットする「取替式または使い捨て式防じんマスク(以下防じんマスク)区分2以上DS2/RS2以上、N95マスク相当)」を推奨します。 ただし、説明書などにもとづいた正しい装着(フィットテスト、フィットチェックなど)を行わないと効果が得られません。裏面に記載しました正しい装着方法を身につけて下さい。なお、防じんマスク区分とは国家検定規格合格品マスクの性能を意味します。

4. 復旧作業にあたる人は、防じんマスクを確保できるように努力します。入手が困難な場合は、自治体などが備蓄している災害や感染症対策用のマスクを使えるよう依頼しましょう。防じんマスクは数に限りがあるため、こうした作業を行う方に優先した配分が期待されます。

5. 防じんマスクDS2/RS2以上(N95マスク)は装着すると呼吸に抵抗を感じ呼吸が苦しくなります。作業にメリハリをつけながら、休憩も十分とるようにし、休憩の際はほこりの少ないところで休むなどしましょう。呼吸器の病気のある方や高齢者は呼吸機能の低下があるためマスクを装着して作業することは推奨できませんので、ほこりの少ない場所での作業などをお願いするようにしましょう。

東日本大震災の復旧・復興に求められる働く人の健康を守る産業保健活動


和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学講師)


 東日本大震災の復旧・復興に関わる方々は様々な危険有害要因にさらされる可能性があり産業保健の観点からの対応が求められる。
 災害の初期には、自衛隊や消防隊などある程度訓練を受けた人が対応にあたるが、今後被災者自身が片付けなどを行ったり、またボランティア、民間の業者の労働者などの関わりが増す。こうした人々を危険有害要因から組織的に守り、二次災害を予防する必要がある。
 危険有害要因としては次のようなものが挙げられる。
 1.生物学的要因
 感染症対策としては、公衆衛生では避難所での感染対策(胃腸炎、インフルエンザなど)が主と考えられがちであるが、その他に被災地においては、がれきに含まれるレジオネラ、作業によって山林などに入ることによるツツガムシ病、そしてけがによる破傷風といった感染症から労働者やボランティアを守る必要がある。
 2.化学的要因
 様々な化学物質が津波によって流されて被災地に拡散しており、これらの曝露から労働者やボランティアを守る必要がある。また、がれきの片付けによって発生する粉じんや、アスベストは阪神・淡路大震災やワールドトレードセンターのテロでも課題となっており喫緊の課題である。
 3.物理的要因
 原発事故による放射線への対応、そして、これまでは寒さ対策であったが、今後は暑さ対策が必要である。さらに、腰痛など筋骨格系の予防や、けがの予防が必要である。
 4.心理社会的要因
 作業者の疲労や過重労働、過酷な労働環境、そして被災者のストレスを受け止めることによるストレスなどへの対応が求められる。
 5.健康管理
 作業者としての派遣やボランティアとして参加にあたっては十分な健康が保持されているかを確認し、持病などがある場合には配慮をする必要がある。
 これらの要因に対してすでに様々な災害や産業現場での教訓や経験が産業保健には蓄積されており、今こそ実践に移す時である。
 しかしながら、様々な課題があるが2つの課題を強調する。
 1つ目の課題として、産業保健の知識と実践をどのように現場に反映させるかである。ボランティア組織や、民間業者などは数多くあり、それらのすべての情報を流し、さらにすべての人に実践していただくことは容易ではない。インターネットなどの活用はその解決の糸口にはなりうる。しかし、情報の入手を容易にし、かつ分かりやすくした情報を豊富に、そして様々なチャネルで産業保健の専門家や行政が流すことが求められる。また、行政や業界団体などが労働者の健康を守る産業保健の視点を常に意識するための仕組みが必要である。
 2つ目の課題としては、「リスクに応じた対策」ということが現場では容易ではないことである。人は一般的に「小さなリスクは大きく感じ、大きなリスクは小さく感じる」傾向がある。放射線でも、粉じん対策でもリスクに応じたバランスの良い対策が必要であるが、実際に現場での具体的な対策に関する判断には「応用」が必要であり、また過剰な対策を予防するには専門家の関与が必要となる。こうしたことからもリスクに応じた対策の具体例を多く提供しつつ、産業保健の専門家ができるだけ関わることが課題の解決になると考えている。
 産業保健の視点は復旧・復興になくてはならないものであり、我々産業保健の専門家への期待は大きく、それに応えなければならない。また、経験したことのない新たな課題に対しては協力して解決をしていかなければならない。

2011年4月15日

被災地に入る医療従事者・ボランティアなどが知っておきたいほこり(粉じん)に関する7つのポイント

1.被災地ではがれき等からほこり(粉じん)が発生しています。特に重機(ブルドーザー、ショベルカーなど)を使ったがれきの撤去・片付けなどの作業が周辺で行われる場合には、空気中のほこり(粉じん)の濃度が高まります。ほこり(粉じん)を吸い込むことによって、喉の痛みや咳などの呼吸器症状を生じ、大量に吸い込む(特に径が5μm以下の微粒子)とじん肺などの慢性の肺機能の低下などをおこします。

2.ほこり(粉じん)にどのようなものが含まれているかはその場所によって異なります。ほこりには、ケイ酸などを含む鉱物性粉じんや、木の木片などの有機性粉じん、カビなど様々なものがあります。また災害後には、建材などに含まれているアスベストが大気中にでることも課題となります。どのようなものがどの程度飛散しているかを正確に把握するためには、測定が必要です。

3.訪問診療などで地域を訪問する際には、重機による(ブルドーザー、ショベルカーなど)の作業が行われている場の近くに行く可能性があるため、防じんマスクDS2N95マスク)を携帯します。

4.重機による作業が行われている場を歩行や車で通過する際には、なるべく距離をとり、短時間とし、吸い込まないように防じんマスクDS2N95マスク)を装着します。

5.次のような場では防じんマスクDS2N95マスク)の装着は必要ないでしょう。
1)周囲で重機作業が行われていない場所
2)屋内で外部からの粉じんが入ってこない場所
ただし、感染対策は別途考慮してください。また、咳をしている患者さんに防じんマスクDS2N95マスク)を使うような誤解がないように注意してください。

6.マスクは正しく装着しないと顔とマスクの間にすきまが出来ほこりが入ります。装着時にマスクを手で覆い、あご、ほほ、鼻にしっかりフィットするようにします。防じんマスクDS2N95マスク)はマスク全体に手をあてて、息を吸ったり吐いたりして空気がもれないことを確かめます(フィットテスト)。

7.アスベストは、重機などの破砕によりスレート建材や吹き付けられたロックウールなどから大気中に出る可能性があります。大気中では拡散するため重機を用いた作業に従事しなければ高濃度のアスベストのばく露はないと考えられます。診療や重機の近くに行かないボランティアの方々はアスベストを過度に恐れる必要はありませんが、前述のような粉じん対策は必要です。行政や解体に関わる業者はアスベストの有無について調査を行い、調査結果を公開して過度な不安が発生しないようにする対応が求められます。

担当:フィットテスト研究会、特定非営利活動法人東京労働安全衛生センター

2011年3月30日

復旧作業の呼吸用防護具 フィットテスト研究会ビデオ公開

2011319日に開催されました
復旧現場作業者のための呼吸用保護具(防護具)の
適正使用に関する緊急特別セミナーの様子が
Youtubeに掲載されました。


お時間の限られた方は全体のまとめだけでも
ご覧ください。


また、セミナーのまとめや関連情報はこちらでご覧になれます。
復旧作業に従事する人や管理者が知っておきたいほこり(粉じん)・アスベストに関
する7つのポイント
もご覧いただけます。


セミナーの目的:少しずつ復興に向けての作業が始まりつつあります。またすでに現
地に入って様々な作業をされておられると思います。その際、忘れてはならないことは、自分や同僚の健康と安全を守ることです。特にほこり(粉じん)やその他の有害物質を吸い込んでしまうことによるじん肺などの肺の病気の発生を予防する対策が必要です。ニューヨークの2001年の9月11日に発生したテロの後に作業をした方々の肺機能が1年度に急激に低下し、その後回復をしなかったことが米国の権威のある New England Journal of Mecicine に報告されています(N Engl J Med.2010 362(14):1263-72)。また、アスベストの吸引により胸膜中皮腫に罹患するリスクも増えることも知られています。
 本セミナーでは、特に呼吸器(肺)を守りながら作業をするために必要な呼吸用防
護具(マスク、呼吸用保護具)の使用法について最低限知っておきたいことを短時間で紹介します。

<参加することにより>
1.復旧作業に関わる際に必要な呼吸用保護具を理解することができます
2.呼吸用保護具の正しい使用法を理解し、実践する知識を得ることができます

■日時:2011 3 19 日(土曜日)13 時~16
■講師:和田耕治(北里大学医学部衛生学公衆衛生学)、
    吉川徹、村田克(労働科学研究所)ほかフィットテストインストラクター
■会場:スリーエムヘルスケア() 研修室

主催:フィットテスト研究会 共催:日本産業衛生学会医療従事者のための産業保健
研究会
後援:日本産業衛生学会 協賛:日本保安用品協会、産業医学推進研究会

2011年3月19日

復旧作業に従事する人や管理者が知っておきたいほこり(粉じん)・アスベストに関する7つのポイント

1.復旧作業(インフラなどを従前の機能に回復させるまで)にあたって個人や作業者の健康を守ることが必須です。
2.復旧現場では、ほこり(粉じん)、アスベスト、カビなどが呼吸器(肺や気管など)へ影響を与える可能性があります。そのため粉じん・アスベストに関する基本的知識を個人は学び、組織は必要な情報と呼吸用保護具等の提供を行います。また、必要な対策が継続して行われているかを確認します。
3.復旧の現場における、ほこり(粉じん)にはどのようなものが含まれているかわかりません。アスベストやその他の有害物質を含んでいる可能性がありますので、できる限りほこり(粉じん)を吸い込まないようにします。
4.復旧における作業では防じんマスクDS2以上(N95マスク以上)を推奨します。ただし、説明書などにもとづいた正しい装着(フィットテスト、フィットチェックなど)を行わないと効果が得られません。
5.復旧作業にあたる組織は、防じんマスクDS2以上(N95マスク以上)を確保できるように努力します。また入手が困難な場合は、各自治体などにおいて地震や感染症対策としての備蓄からの放出を依頼しましょう。防じんマスクDS2以上(N95マスク以上)は数に限りがあるためこうした作業へ優先した配分が期待されます。
6.異常なにおいや異変を感じたら、直ちに作業を中断し、退避します。
7.復旧作業における呼吸用保護具の選択例を紹介します。

ばく露リスク保護具作業内容の例
低い不織布製マスク・損壊した家に物をとりに帰る、通常の掃除をする場合
中程度防じんマスク区分2以上(N95以上マスク)
アスベストが明らかな場合は区分3以上
・重機やチェーンソーなどの機械を用いた作業が行われている周辺で作業している場合など。(個人はこうした場所には立ち入らないようにすることが望ましいので、作業する時間を変えることなどが薦められます)
高い全面形取り替え式防じんマスク区分3またはPAPR・損壊建物における重機などを用いた作業(解体)を継続的に行う場合。なお、装着する作業者は使用法について指導を受ける。

PAPR: 電動ファン付き呼吸用保護具


フィットテスト研究会は、医師、看護師、工学の研究者によって組織された呼吸用防護具に関する研究会です。http://www.isl.or.jp/service/fittestinstructor.html


問い合わせ先:吉川徹(労働科学研究所研究部)、和田耕治(北里大学医学部衛生学公衆衛生学講師) 2011年3月19日の緊急セミナーにて提言されました。