I.なぜいま大人の風疹なのか?
・風疹はウイルスによる感染症ですが、予防接種で十分に予防できることから最近では感染者も少なくなっていた
・今年に入ってから特に20歳から40歳の男性の間に風疹が流行している。感染者全体の80%が成人男性。この世代はちょうど子供の時に予防接種の副反応などにより一時混乱していた時代があり、風疹の予防接種をうける機会がなかった人がいる。
・この年代の男性には抗体を持っていないひとが100人に15人(15%)います。
特に35-39歳では20%以上が抗体をもっていない。
感染予防のためには2回の予防接種が必要とされているが、この中には一回しか予防接種をしていないために抗体が十分にないひともいるし、風疹に感染したと思っていたが実は他の病気だったという方が含まれる。
・感染すると、職場や客先、そして満員電車などで他の人にうつす可能性がある。
・最も恐れるべきは、女性が感染する。特に妊娠している女性が感染すること。妊娠20週までに風疹に感染すると、おなかの赤ちゃんに、一生残る重篤な障がい(難聴・視力障がい・心臓奇形など)が起こりうる。特に妊娠に気づきにくい初期に感染すると高率に障がいが起こる(先天性風疹症候群)。
・職場にも女性がいるのでその方々に感染させてしまうことを絶対に避けなければならない。すでに先天性風疹症候群としてうまれた赤ちゃんが8人(平成24年10月から平成25年3月末)おり、さらに増えることが危惧されている。
・この風疹は5月の大型連休から夏にかけて、近年まれにみる流行がさらに拡がる見込み。そして、これまで話題になっていた首都圏だけではく、全国的にも広がる可能性がある。
II. 風疹はどんな病気か?
・風疹は感染した人からのせきやくしゃみ、そして手についた風疹ウイルスか
らうつる。感染力はインフルエンザの5倍とも言われており、1人いただけでも職場にとって大きな脅威となる。
・症状は、感染してから2-3週間の潜伏期間の後に発熱・顔から全身にひろがる赤い点状の発疹・首の後ろ側のリンパ節の腫れがあらわれる。
・特効薬はない。
・発疹の出る1週間前から感染力があり、発疹が出た後も約1週間は感染力がある。風疹とわかったら他人への感染を防ぐために絶対に出歩いてはいけない。
III.いま働く人に求められること
2つの行動により、あなた自身を風疹から守り、職場の集団感染を防ぐ。そして、先天性風疹症候群で生まれてくる赤ちゃんを減らすことができる。
1)風疹かもと思ったら「絶対に職場に来ない、来させない」
自分が風疹かもと気づく症状は全身の点状の発疹。
その前に38度から39度の発熱や頭痛、倦怠感などがありますが風疹以外との鑑別は難しい。しかし、流行している地域でそのような症状があればもしかして風疹かもと思う!
いずれにしても発熱していれば職場に来ないということを徹底することは普段の職場の感染対策として必須。
体に発疹などがでた場合には外には出歩かず、電話で病院に風疹の可能性を伝えて受診を。風疹と診断されたら体の発疹がなくなるまでは、絶対に職場に行ってはならない。主治医と十分に相談を。
2)風疹の予防接種を受けます
20-40代の男性は風疹の予防接種が勧められる。
特に、妻が妊娠する可能性があれば強く勧められる。
10代後半から40代の女性(特に、今後妊娠する希望のある者又は妊娠する可能性の高い方)も予防接種を受けておくと妊娠したときに安心。
ただし、病原性を弱めたウイルスが入っている生ワクチンというタイプのためワクチン接種後2ヶ月間は妊娠をさけなければならないので注意が必要。すでに妊娠している方は風疹のワクチンを受けることができない。
なお、予防接種は正確にはまず風疹の抗体を測定してからということが正しいが、採血の手間、コストなどもかかる。なによりも抗体があった場合に接種をしても副反応がでるわけではないので、予防接種をすることを優先する。
・予防接種は内科や小児科で「麻疹・風疹混合ワクチンを受けたい」と相談すると、8000円から10000円程度で受けられる。事前に電話などをして確認しての受診を勧める。
・費用の補助をしている市町村もあり、無料から自己負担の軽減まで様々。しかし、補助がないからといって控えたり、しばらく待ったりすることは得策ではない。
・課題となりうるのは、予防接種によりごくまれに副反応がでることがあるこ
と。そのため職場としては情報提供を行うということになる。なお、強制に接種するというのはできずあくまで自己判断にゆだねることになる。
IV.妊婦さんに対して
・職場や家族に妊婦さんがいた場合には特に配慮が必要。風疹の予防接種歴や抗体価が十分であればいいが、それを職場として妊婦さんに確認することも考慮に値する(妊婦さんは初期に抗体検査をしている)。
・予防接種歴が確認できない、抗体価が十分でない場合で、地域で流行している場合には、不特定多数の人と接するような機会を減らすこともリスクを下げることになりえる。妊婦さん自身もできるだけ人混みの多いところに行かないなども考慮する。
・妊婦さんが近くにいる場合妊婦の夫、子ども及びその他の同居家族(50歳以上においても)は風疹予防接種の検討が求められる。
V.おわりに
・地域の風疹の流行に関する情報を集め、流行した場合には特に上記の対策が必要。
国立感染症研究所 感染症情報センター.風疹の発生動向.都道府県別のデータもあり(速報グラフより)。
来年以降も流行する可能性が高いので、今年のうちに対策をきちんとしておきたい。
・また、風疹に限らず職場の感染症対策の危機管理として、発熱などの症状があった際にはお互いに仕事を協力して助け合い安心して休めるような組織作りが重要であることは言うまでもない。