2011年3月12日

津波の後の復旧作業における労働者の安全と健康を守る10の点~2004年インド洋津波に学ぶ~

津波の後の復旧に関わる労働者やボランティアの方は安全と健康を守るための対策を知り、実行する必要があります。作業者の中には経験がない人もいるので、互いに安全を確保しながら作業を進めます。

1.感電を予防します
自然災害の後に感電が起こりえます。感電を防止するために、清掃活動に参加する人は、次の手順を実行することが求められます。
電気回路や電気機器の近くに水がある場合には、メインのブレーカーまたはヒューズパネルの電源を切ります。電気は、専門の電気技師の確認が終わるまで入れません。もし電源がオフになっていることが確認されない場合には水のあるところに入らない、また地面のぬれているところで電気機器をさわらないようにします。絶対に切れた電線に触れないようにします。
電線が切れた地域での掃除などをする場合には、電気会社に連絡し、送電の停止などを行います。頭上の送電線の近くではしごなどを動かす際には特に注意が必要で、不注意な接触がないように細心の注意を払います。

2.一酸化炭素中毒を予防します
洪水の後の片付けには、ガソリンまたはディーゼルポンプ、発電機などを使用することがあります。これらの装置は、無色、無臭で致命的な「一酸化炭素」を発生するため、こうしたガソリンを用いる機械は屋外で使用し、屋内に持ち込まないようにします。

3.筋骨格系障害を予防します
片付けの作業により、手、腰、膝、肩などに深刻な筋骨格の障害を起こすことがあります。泥などを手で運んだり、建材を運んだりするときは特に腰痛への注意が必要です。こうした障害を予防するために2人以上のチームを使い、一人あたり20Kg以上のものを運ぶのは避け、機械を用います。

4.寒さ・暑さ対策をします
24以下の水につかったり、働いたりすると体の熱が失われ、低体温になります。低体温のリスクを減らすためにもゴムのブーツ、暖かい洋服、単独作業をしない、水の外に頻回に出る、可能な限り乾いた洋服に着替えるなどします。
 また、暑い季節には熱中症の対策も必要です。

5.地盤の不安定性を考慮します
洪水の水は、歩道、駐車場、道路などを破壊します。水によって破壊された建物や地面が安定していることを期待してはいけません。津波に持ちこたえた建物も倒壊の危険性があります。洪水で破壊された建物は専門家による確認の前に中や周りで働いてはいけません。もし建物が動いたり、変な音がしたらすぐに立ち退きます。また余震による倒壊にも注意します。

6.危険物を管理します
洪水の水には、タンク、ドラム、パイプなどからの重油、農薬などが含まれている可能性があります。消防署や自治体などとの連絡なしに不明なコンテナを移動しません。
潜在的に汚染された可能性のある地域での作業には、皮膚への接触や蒸気の吸入をさけるための適切な防護服を着用します。農薬やその他の有害な化学物質にさらされた可能性のある皮膚は頻回にしっかりと洗います。

7.溺水に注意します
たまった水に入ると泳げたとしてもおぼれる可能性があります。車の中にいる人が溺水する可能性も高いです。深さが不明の場所に車や重機で入らないようにします。単独作業の禁止や洪水の水がたまった近くで作業をする際にはライフジャケットを着用します。

8.保護具の装着と応急処置をします
浸水した地域での作業では、次の保護具が必要になります。
ヘルメット
ゴーグル
手袋
安全靴、防水ブーツ
チェーンソー、ブルドーザー、送風機、乾燥機などの機械からの騒音は、作業者の耳鳴りや聴覚障害をおこします。お互いに叫ばないと伝わらない場所では耳栓をします。
 また保護具をしていたとしてもけがややけどをすることがあります。汚染された水に曝露されると大変危険です。すべてのきずはきれいな水で洗いましょう。また、作業中の切創に対して破傷風の予防接種を確実にします。


9.閉鎖空間での作業には十分に注意をします
ボイラー、パイプライン、ピット、浄化槽、下水タンクなどの閉鎖空間では有毒ガスの発生、酸欠、または爆発の可能性があり死亡事故につながる可能性があります。多くの有毒ガスや蒸気は目に見えず、またにおいもないので、安全かどうかを感覚で判断してはなりません。
閉鎖空間には十分なトレーニングを積んでいなければ絶対に入ってはいけません。もし閉鎖空間に入る必要がありトレーニングを積んでいなければ消防に相談しましょう。
閉鎖空間とは、入口または出口が限られた範囲しかあいていない、不十分な自然換気、連続した作業のためのスペースが想定されていないといった場所が該当します。

10.ストレス、長時間労働、疲労を予防します
長時間の労働や、家が破壊されたり仕事を失ったりすることで非常に大きなストレスを感じます。このようなストレスにさらされている作業者はけがや感情的な事件がおこりやすくなり、またストレスに起因する疾患を発症しやすくなります。家族、近所の人、メンタルヘルスの専門家による支援はストレスに関連する疾患などの予防につながります。
疲労を予防するために、復旧や清掃の優先順位を設定し(日や週単位で)、身体的な疲弊を避けます。また、睡眠を十分にとり、休息をこまめにとり、疲弊しないようにします。


和田耕治

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