2011年3月15日

簡易トイレもない被災地の担当者が知っておきたい7つの基本原則

1.衛生状態の維持のためにできるだけ早期にトイレを設置しましょう。
 津波災害において糞便は衛生状態の維持に対する最大の驚異であり、速やかなトイレ設置は極めて重要な課題です。トイレの設置がおくれて不潔な状況が生じると被災者の衛生意識も低下しがちになってしまいます。

2.被災直後に最も実用的なのはトレンチ式トイレ(溝式トイレ)です。
 いわゆる溝を掘っただけのトイレです。可能であれば足場や手すりを設置しましょう。溝の大きさは深さ1m、幅75cmとすると利用被災者50人あたり長さ3.5mが目安となります。しかし、溝掘りは相当な重労働ですのでまずは可能な範囲で溝や穴を掘って対応し、順次、拡張していくのが現実的でしょう。ただしトイレの溝掘りは大変ですので、できれば当初から余裕をもって設置することが勧められます。可能であれば重機の利用を検討してください。

3.設置にあたっては生活水源の汚染予防に留意しましょう。
 トイレの設置にあたってはプライバシーのみならず、生活水源が汚染されないという点にも十分に留意しましょう。トイレを優先的に整備する目的は水質汚染源の汚染防止にあるといっても過言ではありません。なぜならば津波災害後には下痢症などが流行することが多く、その原因としてもっとも多いのは糞便による水質汚染だからです。

4.糞便には殺菌消毒薬を直接注がないようにしましょう。
 細菌による分解が遅れてしまいます。 悪臭や害虫対策には灰・油・土が有効です。用便のたびに土等をかけ、溝が縁から30cmの所まで一杯になったら土をかけて固めましょう。

5.トイレ用地計画
 用地としては 1カ所以上の区域(例:20m×20m)を住居から離れた風下の、通うのに不便がない程度の近さに選定しましょう。区域は男女別に指定しましょう。この区域に排泄場所を設け、入り口の一番遠くから順に使用します。トイレは夜間も使え、女性や子どもも安全に利用できることにが必要です。場合によって子供や障害者用の区域を別途選定することも検討しましょう。用地面積の基準は1日1人あたり0.25平方mです。上記の例は50人が1ヶ月利用を想定した面積です。使用期間が1ヶ月を超える場合は新たな用地を選定しましょう。

6.被災者向けに広報活動を行ない排泄区域の利用をうながしましょう。
 トイレは使用が可能であっても、清潔でなければ使われないため、毎日、点検し、必要に応じて清掃することが必要です。特に住居や給水設備付近では排泄しないよう呼びかける必要があります。また手洗い場所を近くに設けましょう。石けんの利用が可能であればなお好ましいと考えられます。
ただしトイレや手洗い場の設置にあっては飲用や調理に利用する水が汚染されないことに十分留意する必要があります。

7.トイレットペーパーについて
 トイレットペーパーの不足は大いに困る問題で、過去の震災でも幾度も指摘されています。これから被災地に入る方は被災者のためにも十分量を持ち込むとよいでしょう。日本の歴史的には紙以外にワラ・葉っぱ・木などの棒・石などが利用されることがあったそうです。支援物資が届くまでの間、入手可能な物資で乗り切ることが求められます。


産業医科大学公衆衛生学 久保達彦
[ 参考資料 ]
JICA国際緊急援助隊医療チーム中級研修資料
UNHCR緊急対応ハンドブック

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