2011年3月21日

避難所のインフルエンザ対策6つのポイント 

 避難所は集団生活の場であり、また体力が弱っている方々が少なくないと思います。今後、避難所などでインフルエンザの集団発生が多発してくる可能性が高いと思われます。なお、被災地の状況は地域ごとに刻々と変化していると思います。あくまでヒントのひとつとして、現場の状況をご確認いただきながら対策いただければと思います。

1)持ち込ませない

 避難所のインフルエンザ対策において、まず大切なことは「ウイルスを持ち込まない」ということです。言うまでもなく、発熱したボランティアはもちろん、いくつもの避難所を巡回するようなボランティアも、不必要に避難所内に入らないことだと思います。避難所の各エリアを個人の家と同じような感覚であつかい、その隔離性を維持することはプライバシーに配慮することのみならず、感染対策上も有効だろうと私は察します。

2)流行を早めに察知する

 早期発見、早期対応が感染対策の基本です。そこで、避難所のなかで感染症サーベイランスを始めるのがよいかもしれません。具体的には、毎朝、発熱がある人、咳や咽頭痛がある人、下痢をしている人を数え、集計を続けるというものです。これは医療者でなくても可能です。これにより、感染症アウトブレイクを早期に感知し、必要な施策を早めにとることが可能になるかもしれません。

3)環境の整備

 避難所内の換気も必要ですが、病気の方、ご高齢の方に配慮しつつ、寒冷に十分に配慮して実施してください。インフルエンザに関する限り、頻回の換気は不要だと思います。室内の密度にもよりますが、1日2回程度でよいのではないでしょうか? 室内をあまり乾燥させることは、飛沫を飛散させやすくするので好ましくないという分析もあります。

 共用するトイレでの接触感染は考慮すべき問題かもしれません。トイレの後には、できるだけ手指を流水・石けんで洗うよう呼び掛けたいところですが、現状では水が極めて貴重であるかもしれません。支援物資に擦り込み式エタノール剤があるといいですね。これは支援する側が心にとめたいニーズのひとつです。

4)症状のある方への対応

 インフルエンザに限らず、風邪を含む呼吸器疾患が流行している場合には、症状のある方がマスクを着用することを徹底させたいところです。マスクがない場合には、周囲の人と2メートル以上の間隔を空けるか、もしくは衝立を設けて隔離することが感染拡大防止になるでしょう。このような対応がとれるのであれば、必ずしも感染者の個室隔離は不要だと私は思います。

 とくにインフルエンザ様症状の重い方については、関係者は「避難所では診れない」と行政などに強く訴えられた方がよいかと思います。この方面については「がんばらない」ということですね。可能な限り、入院対応を含む避難所外での療養が原則でしょう。これがご本人のためであり、感染対策でもあると思います。

5)ワクチンの接種

 まだ避難所内でインフルエンザが流行していないのであれば、ワクチンの接種は可能であれば今から考えておくべきことかと思います。とくに基礎疾患のある方々については、今からワクチンを接種しておいた方がよいかもしれません。

 しかし、すでに流行が始まっている避難所では、ワクチン接種を開始しても意味がないかもしれません。この場合は、基礎疾患のある方、妊婦、幼児など重症化リスクがある方については、タミフルの予防投与を選択すべきかもしれません。

 すでに厚生労働省は行政備蓄していたタミフルの放出を決定しています。ある程度、タミフルは潤沢になると考えられるので、予防投与についても積極的に選択できると私は考えています。

6)人口密度を減らす

 言うまでもなくインフルエンザは、集団で生活しているような空間で広がりやすいものです。その意味で、避難所の人口密度を減らすことは、もっとも良い被災地の感染対策だと私は思います。いまの状況では、なかなか大変だと思いますが、目指すべき方向性なのかもしれません。私たち被災地外の市民としては、積極的に被災者の疎開を受け入れるよう呼び掛けたいと思います。

担当 沖縄県立中部病院 高山義浩

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