2011年3月21日

避難所生活改善のために知っておきたい10のポイント~阪神・淡路大震災の教訓より~


1995年の阪神・淡路大震災の報告書より、避難所生活を改善するための教訓を整理しました。

1.仮設住宅や避難所を自らの手で守るための組織を作ります
仮設住宅や避難所における衛生対策や、高齢者、こども達、妊婦のサポートなどを行う組織を住民が主体となって作ります。こうした組織が自然発生的にできない場合も多く、また組織がないと様々な点について課題が生じます。支援に入った団体は、地元自治体の応援も得ながら住民が主体的な組織作りができるように協力します。また仮設住宅や避難などで組織が崩れることがあるので組織の状況を定期的に確認します。

2.トイレの衛生状態を定期的にチェックし、清潔に使用できるようにします
トイレが不潔な状況では、被災者の不満や怒りが増幅します。また、トイレに行くのを我慢するために、飲食、水分を控える人が出ます。さらに、敷地外の公園などの茂みの中に汚物が放置されたり、トイレの中が水浸しになり、その足で各部屋に出入りするなど、避難所では予期しないことが発生します。
・自主的に清掃担当者を決め、定期的に清掃し、仮設トイレの消毒作業をして下さい。
・下痢を起こす感染症の予防のために、排便後・糞便処理後は、十分に手洗いをします。
また、数に余裕があれば小便用と大便用、さらに下痢をしている人のトイレなどを分けることも対策になります。男女分けるのは早期から行うことが望ましいです。トイレは避難所などの組織の鏡とも言えます。トイレの衛生状況をバロメーターとしながら自主的な組織の運営を支援します。

3.食事を適切に管理します
 「次にいつ配食があるか分からない」という不安感や、炊き出しによって確保した食糧を長期間保存する人も出てきます。不衛生な食事は、食中毒の原因となります。
・製造日などを確認します
・製造者名や製造日付などの無い弁当や賞味期限切れのものは配食しません
・配色前には味、臭いなどに異常の無いことを複数の人数で確認します
・食品、特に弁当類は衛生的な場所に保存する、また、直射日光や暖房されている場所での保管はさけ、ネズミ、ゴキブリ等の害を受けない場所に保管します。
・調理器具の洗浄、消毒や使い捨て食器の使用、アルコール消毒液の利用を促します
・保存に適した炊き出しメニューを選定します

4.持病のある方や、乳幼児は、栄養管理を積極的にします
阪神・淡路大震災では、被災2ヶ月後の健康診断で、中性脂肪値の上昇や、貧血、高血圧傾向が確認されました。原因としては、食事のバランスの悪さ、糖質、脂肪、塩分過多、鉄、ビタミン不足等が考えられます。避難所での炊き出しをきっかけとして、栄養改善への意識付けや自発的な食事への取り組みを促します。さらに、栄養士が指導にあたると効果的です。
アレルギー患者へのアレルギー用食品の配布、糖尿病患者への支援、乳幼児栄養相談も行います。食事は生活において極めて重要ですので可能な限りバランスよく充実させることが求められます。
・限られた食料で可能な限り栄養士などの指導を受けバランスを良くします。
・炊き出しをするときには、塩分の量など調理内容に気をつけます。
・食生活への関心を持ち続けることができるように、食事内容に変化を持たせます。

5.飲料水を安全に保管します
・給水を受けたポリタンク等には配給日時を明記します。
・古くなった水は生活用水等に用い、飲用に使用しません。
・飲水にはできるだけペットボトル入りのミネラルウォーターを利用します
・水道管の破裂箇所からの噴出水や湧水等は飲用に用いません。
・井戸水については、水質調査を行ってから使用します(近くの鉱山にあったヒ素などが微量検出された例がある)。

6.定期的に毛布の日干し、通風乾燥、寝具交換をします
避難所での生活が長引くにつれて、敷きっぱなしの毛布等は汚れ、湿気を含み、特に幼児、高齢者には健康への影響が懸念されます。また、阪神大震災の際には、雨天の多くなる5-6月に入るとダニ苦情等が発生しました。
・晴れた日には毛布の日光干しや通風乾燥を行います。
・利用可能であれば、布団乾燥機を用いて定期的に乾燥を行います。
・高齢者にとって重労働である寝具交換などは、積極的に手伝います。

7.飲酒や喫煙のルールを定めます
避難所生活が1ヶ月を過ぎた頃より飲酒が公然となってきたことが報告されています。
・飲酒や喫煙の広がりを予防するために、ルールを定め、避難所の掲示板などで周知し、皆で守るようにします。

8.周辺の環境衛生の維持を行います
気温の上昇にともなってネズミやゴキブリなどが課題となります。
・ゴミを捨てる場所を定め、ネズミやゴキブリが発生しないように管理します。
・定期的に清掃をし、食べ物や残飯などを管理します。
また、このほかに蚊、ムカデ、ナメクジ、アリ、鳩などの害も発生しうるため発生する可能性があれば早めに対応します。

9.結核にも注意します
阪神・淡路大震災では、被災地の一部が結核罹患率の高い地域であったことや避難生活の疲労やストレス等により、結核患者が増加すると予想され、総合的な結核対策が推進されました。また、乳幼児に対する結核予防のためのBCGの予防接種が、優先的に再開されました。結核対策には、予防、早期発見・早期治療が重要です。
・行政が実施する結核対策には積極的に協力します。
・乳幼児に対するツベルクリン反応やBCG予防接種が再開されたら、必ず受診します。
・咳が2週間以上続く、痰がでる(痰に血が混ざる)、体がだるい、微熱が続く時には早めに医師や保健師に相談するよう促します。

10.ペットの扱いにも注意します
阪神大震災時の避難所では、ペットを連れて避難した人もいて、ペットをめぐるトラブルがありました。ペットの問題は災害時の行政施策としての優先度低いですが、放置すると新たな問題が発生します。
・避難所での犬や猫の飼い方についての啓発をします。
・被災動物の保護、治療、相談、一時預かり等の問い合わせ先を紹介します

参考:阪神・淡路大震災 神戸市災害対策本部衛生部の記録
大震災下における公衆衛生活動(大阪大学医学部公衆衛生学教室)
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/book/10-315/index.html
担当:江口尚、和田耕治

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