2011年3月27日

岩手県大船渡市医療支援(3/24-3/27)

岩手県大船渡市の状況
岩手県大船渡市は、海岸沿いは壊滅的な影響を受けましたが、市役所、県立病院は高台にあったので津波の直接的影響はなく基本的なインフラは残っています。しかしながら海岸沿いの建物はほぼ壊滅と甚大な被害を受けています。市内は少しずつ物も増えていますが、コンビニの多くは休んでおり、またガソリンについては緊急車両は問題なく給油できますが、市民にはまだまだ足りない様子です。

避難所での生活
 小学校、中学校の体育館、ふるさとセンターといった公民館的な場所が避難所になっています。日中は人はややまばらですが、夜や食事時になると周囲からも人が集まるようです。避難所においても連日支援が入っており、少しずつ物も増えていますが、避難所の格差が今後の課題です。
治安の悪化まではないですが、暴力や盗難、詐欺のような業者などが潜在的にはあるようで、市や県から注意を呼びかけています
避難所は体育館の場合には気積も大きいので暖まりにくく、外も寒いこともあり夜間は特に寒いようです。暖房は一酸化炭素中毒の問題もあり切っているようですが、なんらかの対処方法が求められます。発電機は回った限りでは外に置くなどの対応はできていました。しかし、避難所はいやだから車で過ごすなどといった人達が一部におりました。

避難所での診療
 訪問時は、自治医大、長野県佐久医師会、徳洲会、岡山県などから医師を含んだチーム、秋田県能代市、倉敷市、沖縄県などからは保健師チームが派遣されていました。各地域を分担して診療や訪問などを行いました。
 市内の開業医の先生も少しずつ開き初めていますが、AMのみなどで、県立大船渡病院などの支援に入っている医師もいるようです。薬局は中心部では開くようになりましたが、そこまで行く手段がないことや、費用が負担できないことが課題となります。歯科医療も戻りつつありますが、同様の課題があります。

北里大学チームは末崎地区の避難所を担当し、午前午後の計4時間診療を行い、1日あたり100人以上の受診がありました。
外来診療で多かったのは、
 1)慢性疾患の処方、高血圧、糖尿病などの処方の希望
2)かぜ
3)花粉症またはハウスダスト、乾燥した空気による鼻水、咳
4)便秘
 5)不眠
の訴えが多かったです。
 3日のうち1名ずつでしたが、釘が足に刺さった、傷が化膿したなどといった人がいました。破傷風の予防接種ができず近日受診を促しました。TIA疑いの方も1名おられました。
 インフルエンザは24日の段階では4名が隔離されていましたが、その後は毎日23名程度抗インフルエンザウイルス薬を処方しました。幸いその後はそれ以上の患者の発生は聞いておりませんが、他の避難所ではインフルエンザの発生が課題になっているようでした。
 水分摂取、便秘、不眠は積極的に確認されると良いかと思います。
 避難所生活も長くなり、ADLが低下するご高齢の方も少なくありません。包括支援センターなども積極的に動いていますが、そうしたご高齢の方を特定し、リハビリにつなげることも求められます。こうした方は避難所だけでなくその近隣で家が壊れなかったところにもおられます。こうした福祉的なサービスを利用することに抵抗を感じる方も少なくないので必要な方にはこちらから参加を促すことも必要でしょう。

津波被災地の状況
津波の水は完全に引いて、復旧作業が終わり、基幹道路、主要なところの電気は戻っています。ただし、自宅までまだ電気もきていない人もいるようです。消防隊や家ごと流された方は日中は自宅跡地に自宅の物を探しにいっているようです。公的な場所は重機が入り作業が行われていますが、一般の人の家となるとしばらく時間はかかりそうです。市内でも津波に被災していない地域では水道、電気などは問題なく使用できます。


今後の課題
 慢性期として、個別の生活の立て直しとして、仮設住宅などへの移動ならびに避難所の中期的な改善をもれなく行うことが求められます。また避難所の統廃合といったことにより生活の質を高めていくことが必要です。ただし、部落の構成など様々な事情もあり時間をかけながら戦略的に行う必要があります。現段階では担当した避難所ではパーティションで個人の区画などが区切れるようにすることも必要でした。
 医療は被災前の体制に戻すことが目標ですが、津波に被災した開業医の復帰も時間がかかります。基幹病院は急性期のみの対応を行っていますが、すでに疲労もたまっており、外部的に慢性疾患の患者の外来をこなす支援は基幹病院またその周辺にはもう数週間単位では必要でしょう。基幹病院の機能をいつまでにどこまで戻すかなどの戦略が必要でしょう。

被災地へ支援に行かれる方へ
 東北自動車道は開通していますが、ガソリンの入手は相変わらず困難です。また食料なども現地での確保はまだまだ難しい地域がありますので十分な準備が必要です。寒さ対策は当然ながら必要です。宿泊施設の確保も容易ではありません。        

最後に派遣に参加させていただき、最大限の支援をいただいた北里大学並びにチームメンバーのすべての方に感謝します。

担当:和田耕治(北里大学医学部公衆衛生)

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