洪水、津波などの水害の後には、建物や家具が水につかり、湿度が高くなるため、カビ(真菌)が発生します。気温が高いと、さらにカビは増えやすくなります。カビに触れたり、カビの胞子を吸い込んだりすると健康障害を引き起こします。湿度の高い家屋や建物の内部で作業をする時には、カビアレルギー、真菌感染症に気をつけます
1.喘息・呼吸器疾患・アレルギー・免疫抑制状態がある方はなるべくカビのある場所で作業をしません。
呼吸器疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患など)、アレルギー体質、免疫抑制状態(癌の化学療法、ステロイドや免疫抑制剤を使用中)の方はできるだけかびのある場所で作業をしないようにします。
やむを得ない場合は、キャップ(帽子)、ゴーグル(めがね)、マスク、手袋着用など感染防止対策のための個人防護具を使用し、できるだけ作業時間を短くします。
2.アレルギー症状や呼吸困難に注意します
カビを吸い込んだり触れることで、鼻づまり、目のかゆみ、ゼーゼーする呼吸、皮膚のかぶれがおこりえます。そのような症状がでた際にはすぐに作業をやめて、医療機関の受診も検討しましょう。
また、カビアレルギーのある方は、呼吸が苦しくなったり息切れを感じたりと、重篤な症状を起こすことがあります。免疫抑制状態や慢性肺疾患などのある方は、肺真菌症を起こすことがあります。
3.カビのサインを見落としません
壁や天井の変色や悪臭はカビが発生しているサインかもしれませんので必要な対策を行います。
4.カビを発生させない・増やさないようにします。
カビのサインに気付いたら、できるだけ速やかに(24~48時間以内)建物を清掃し、乾燥させてください。清掃する時は、ドアや窓を開放し、乾燥させる時には扇風機の使用することは有用です。
カビの発生が疑われるものは、取り除きましょう。例えば、水分を吸収しやすい物、48時間以上湿った状態であった物、完全に乾燥や洗浄ができない物、また、多孔質で、洗浄困難なもの(例:カーペット、カーペットの下の敷物、椅子のクッション材、壁紙、床や天井のタイル、皮革、紙、木材、食物等)です。
5.湿度管理をしっかりします
乾燥させることがカビの増殖を防ぐうえで最も重要です。清掃と乾燥が基本です。また、屋根、壁、配管など、水まわりの水漏れ対策も行います。
6.作業時はマスクを装着します
カビの発生した建物内に入る時や、カビを清掃するときには、できれば防塵マスクDS2(N95防じんマスク)を着用しましょう。(カビの胞子は、非常に小さいため、サージカルマスクでは不十分な場合があります。また、肺の奥深くまで侵入するため、肺真菌症を起こすことがあります。)使用にあたってはフィットテストなどを行い正しく使用します。
防塵マスクがない場合には最低でもサージカルマスクを着用し、換気を行い、作業時間を短くします。
7.カビ掃除には水、石鹸、もしくは漂白剤を使用します
濡れたものや表面は、洗剤と水で洗浄しましょう。
硬いものの表面を掃除する際は水、石鹸、もしくは漂白剤(塩素系漂白剤は酸性洗剤*などの酸と混ぜると有害なガスが発生するので危険です!)を用いてください。エタノールも有効です。
(*酸性洗剤にはトイレ用洗剤などがあります。「混ぜるな危険!」と書いてあるものは混ぜてはいけません)
コンクリートのような硬くて、粗い表面は、カビの菌糸を、硬いブラシなどでこすりとるようにしてください。
協力
立石清一郎、丸山 崇、田中宣仁、尾土井悠、森 晃爾(産業医科大学 産業医実務研修センター)
谷口初美(産業医科大学 医学部 微生物学教授)
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