1.災害では次のことが一般的に見られます
1)災害を経験して、影響を受けない人はいません。
2)災害が起きてしばらくは、人々は力を合わせて働きますが、やがて衰えます。
3)メンタルヘルスにまつわる問題は、準備期・対応期・回復期それぞれに存在します。
4)災害によるストレスや悲嘆する反応は、「異常な状況に対する通常の反応」です。
5)災害時のメンタルヘルス援助は、本来の心理的な関わりよりむしろ実用的なこと(例えば電話を提供したり、コーヒーを配給したり、聞くこと、励ますこと、安心させることなど)になります。
2. 被災者の感情の推移にはいくつかの段階があります。
英雄期: 人々を守るために、自分を危険にさらしてまでも捜索や救援活動を行う。
ハネムーン期: みんなの利益の為に力を合わせて活動する。
たな卸し期:外部からの情報源にアクセスできるようになり、どこで何が起こったのか全貌が見えてくる
幻滅期: 物資の配給が、あまりにも少なく、遅く、十分でないことに不満がでてくる。
復興期: 人々は自己の利益を越えて動いて、再建を始める。
3. ストレスの度合いを決定する要素
1)災害の特徴(回避できたか、突然であったか、影響はどの程度か、どれほど持続するか、制御できるか)
2)コミュニティや社会的要因(コミュニティの資源などの準備状況、被害の範囲や性質、過去の経験知、社会的政治的不安、復興に向けての資源の有用性など)
3)個人の特性(実際の損害や損失における脅威、過去の経験知、ストレスの閾値、ストレス対処方法、利用できる社会的支援の種類と程度)
4. 災害後のストレスは、多くの場合、自らの力で回復します。
一部にはPTSDなどで専門家の治療を必要とすることがありますが、多くの人は一時的に不眠や不安などの症状が見られるものの、自らの力で回復します。支援が必要な人の選別などをし効果的に専門家の支援を行います。
5.生存者は次のような心理的反応を示します。
1)基本的な生存の心配
2)愛する人の喪失やその人の物理的、身体的安全についての恐怖や不安、財産の損失による悲しみ
3)災害による悪夢や想像による睡眠障害
4)避難生活に関する心配や孤立または混雑した生活状況
5)災害に関連した感情や出来事について繰り返し話したい
6)自分が、コミュニティとその復興活動の一員でありたい
6.次のような反応があれば専門家に相談しましょう
1)見当識障害(ぼうっとしている、記憶喪失、最近の出来事を思い出せない等)
2)うつ状態(絶望感の広がりと他からの撤退)
3)不安(絶えずイライラ、落ち着かない、他の災害の強迫恐怖)
4)精神障害(幻聴、幻想、妄想など)
5)自分のことができないこと(食べない、入浴しない、着替えない、日常生活を送れない)
6)自殺や他殺の企図
7)アルコールや薬物の問題となる使用
8)家庭内暴力、児童虐待または老人虐待
担当:阪口洋子、末廣有希子、和田耕治
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